「G」という名の絶対者


香港




『何?』

 帰還の途中だった将治だが、香港上空で突然まだ帰還しないと言い出したのだった。

『見たいんだ。ゴジラの戦いを。駄目かな。』
『……まあいいだろう。ガルーダⅡ自体は損傷を受けている訳でも無いからな。その代わり、勝手な攻撃だけはするな。』
『ああ。』

 通信を切り、将治は今、自分の真下で起ころうとしている戦いに目を向ける。


ゴァァァァァァァァォン


 ゴジラがいて、


クェェェェェェン


 ドラーグンもいる。どちらが先に仕掛けるか。何とも言えない緊張感が走る。

『これが怪獣同士の戦いなんだ……』

 対ゾビラ戦の時は、操縦と援護の事で頭がいっぱいだった。怪獣同士の戦いを直に感じる事は無かった。だから今将治は、人間の介入しない戦いを見届ける為にここにいる。

『ゴジラ……お前が本当に建の思う存在なのか、見届けさせてもらうよ……』


ゴァァァァァァァァォン


 ゴジラはまず、ドラーグンに熱線を放った。ドラーグンは触手を盾にしてそれを塞ぐ。


クェェェェェェン


 その隙に、ドラーグンは別の触手をゴジラの足に絡めた。足を取られたゴジラはバランスを崩す。ドラーグンはそのままゴジラを引き倒した。


クェェェェェェン


 ドラーグンは更に、両手と首に触手を巻きつけた。ゴジラは起き上がる事もままならない。


ゴァァァァァァァァォン


 火球を放ち、ドラーグンを一瞬怯ませたゴジラ。何とか起き上がる事はできたが、依然として体の自由はドラーグンに奪われたままだった。


クェェェェェェン


 残った触手の先端を四方からゴジラに向けるドラーグン。先端から細いレーザーを放った。何十もあるレーザーに、ゴジラはじわじわと体力を奪われていく。


クェェェェェェン


 ドラーグンは再び、ゴジラを海中に引き倒した。


ゴァァァァァァァァォン


 ゴジラの咆哮の後、ゴジラの全身が光った。その瞬間、ドラーグンは大きな悲鳴を上げて後退した。

『あれが体外放射……』

 ゴジラの切り札の1つだ。全身から放たれたエネルギーは、ドラーグンの触手を焼き払った。


クェェェェェェン


 最早、ドラーグンには反撃する手段は残されていなかった。起き上がったゴジラは、ドラーグンに向かって熱線を放った。


ドォォォォン


 爆発、炎上したドラーグン。ゆっくりとその身を海に沈めていく。勝利の咆哮を上げるゴジラ。

『あっという間だったな……こちら麻生。ゴジラ、ドラーグンを撃破、海上に向かう。本機もこれより帰還する。』
『了解した。』

 ガルーダⅡを筑波に向けて飛ばす将治。燃え盛るドラーグンの亡骸を見下ろす。

『あんな戦力の怪獣を世界中に……奴らの意図は何だ?』


「欧州、ならびにアジア圏の怪獣は全て掃討しました!」
「ふぅ……」

 一段落つき、腰を下ろす新城。 未希も胸に手を当て、ほっと一息ついた。

「とりあえず、私たちが押してるわね。」
「ああ。しかし、一度負けているマジロスやフォライドにゾエア、それにドラーグンを出現させた理由が分からない。本気で仕掛けようとするなら、更に強い怪獣を生み出すはずだ。」
「DO-Mを使わせる為とか?」
「いや、それなら尚更、大戸やガルーダⅡでは手に負えない怪獣を向けて来るさ。何かある……」

『オリハルコンを使用する事そのものが目的ではないでしょうか。』

「え?」

 未希にだけ聞こえてきた声。まさしくそれは、コスモスの声だった。

「未希、どうした?」
「しっ。ちょっと静かに。」

『前にも話した通り、オリハルコンはモスラ、そしてバトラをも生み出したと言い伝えられている神器です。しかし、そんな物をこの短期間に何度も使用するなど、許されない事。』
「ちょっと待って。バトラは地球生命が生み出した怪獣じゃ無かった?」
『正確な事は分かりません。しかし、今回の事は私たちの祖先に関わる問題でもあるようです。今、私たちは地球に向かっています。』
「え?という事は、モスラも来てくれるの?」
『はい。少し時間はかかりますが、必ず、お力になります。』
「ありがとう。待ってるわ。」

「未希?」

 コスモスとの会話を終えた未希。話しかけている新城に振り向き、一言。

「功二さん。モスラも来てくれるわ。」
「モスラ?」
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