「G」という名の絶対者


「これは…………」

 真一に案内され、遺跡の奥までやってきた北川達。目の前にある壁画を見て唖然として立ちすくんだ。

「中村君、これは大手柄だぞ。」
「え?はい?」

 北川は壁画により、両手で静かに触れる。

「これで大分研究は進む。古代に栄えた文明を滅ぼした者の正体が明らかになるんだ。」
「え?」
「全てはこの壁画が物語っている。」

 巨大な黒い影と、それに立ち向かう2つの影。玲奈はそれら全てを写真に撮る。

「北川先生、全く分かりません。確か、これまでの研究結果だと……」
「いや、その事実ですら、覆されるに違いない。当事者ですら知らなかった事実だからね。」
「そんな事って……」
「よし、早速帰国だ!」
「え?帰るんですか?」
「日本にある資料と照らし合わせたい。それに、あったと思うが?インファント島の記録が。」
「ええ……」


 遺跡から出て、早速荷物の整理を始める研究生達。真一はその指揮。玲奈は帰りの交通の手配。北川は資料の整理をしていた。

『え?はい……分かりました。』

 深刻な表情を浮かべて、北川の元に歩み寄る玲奈。

「北川先生、その……日本に帰れません。」
「ああ……ちょっと待ってくれ。全ては今からおよそ1万2千年前の出来事で……ってええ!?な、なんだってー!?」

 北川は何かに夢中になると、他の事には気づかない性格だ。しかし、日本に帰れないとなると話は別だ。

「何故?船も出ないのか?」
「欧州のあちこちに怪獣が現れていて、空も海も駄目です。それに……」
「それに?」
「この辺りにちょうど、海の怪獣がいるらしくて……」


クェェェェェェン


 玲奈がそう言った瞬間、突然海から水柱が立ち込み、巨大クラゲ、ドラーグンが現れた。

「これか?海の怪獣というのは?」

  

 ドラーグン出現はもちろん、大戸も察知済みだった。あっという間に現場に到着する。

『3連戦になったが、これでとりあえず最後だ。気を抜くなよ。』
『黒木艦長!あの島に人がいます!』

 モニターに映し出される人の影。それを見た黒木は溜め息をつく。

『避難命令が届かなかったか……ドラーグンをあの島から引き離して攻撃する。ドラーグンを威嚇するぞ。』

 大戸はアブソリュート・ゼロの発射準備を開始した。先端の青白い光をドラーグンに見せつける。

「北川先生、あれは……」
「ふぅん……Gフォースの新型兵器でなければ分からないが……」

 ドラーグンは着実に島から距離を離していく。大戸はそれに合わせて後退する。

『敵はこれまでとは一味違う。未知の敵だ。データも無い。この巨大クラゲを倒し、大戸の初陣を綺麗に締めよう。ホーミング・フルメタルミサイル発射。』

大戸はドラーグンを島から引き離す事に成功した。

『よし、思う存分やれるな。フルメタルミサイル発射。』

 大戸はフルメタルミサイルをドラーグンに向かって放った。ミサイルはドラーグンの傘の部分を見事なまでに貫通した。

『何?』

 しかし、ドラーグンは健在だった。それどころか、貫通した部分が復元している。続けて飛んできたミサイルを触手で絡め捕り、海に叩き落とす。

『なるほど、フルメタルミサイルは無力か。なら、冷凍ミサイルを撃て。』

 当然のように、次は冷凍ミサイルを放つ。しかし、ドラーグンは海中に潜ってしまった。海上で爆発する冷凍ミサイル。

『海面を凍らせるだけに留まったか……』


クェェェェェェン


 今度はドラーグンからの反撃だ。触手の先からレーザーを放った。

『正面に被弾!』
『気にするレベルのダメージでは無い。終わらせよう。三連プラズマレーザー発射スタンバイ。』
『了解。』

 ドラーグンの攻撃は、空中にある大戸には上手く届いていない。大戸は難なく、三連プラズマレーザーのチャージを終えた。

『三連プラズマレーザー、スタンバイ。』
『発射。』

 三連プラズマレーザーがドラーグンを貫いた。ドラーグンの全身が燃える。

『よし。とどめだ。』
『アブソリュート・ゼロ、発射。』

 チャージしていたのは、三連プラズマレーザーだけでは無かった。ドラーグンを引きつけるためにチャージしていたアブソリュート・ゼロも発射可能だった。
 アブソリュート・ゼロは、ドラーグンを包む炎をも凍らせてしまった。ドラーグンはもう動かない。

 大戸は、たたみかけるようにフルメタルミサイルを放った。フルメタルミサイルがドラーグンを粉々に砕く。

『ドラーグン沈黙。作戦終了だ。』

 
  

「すごい……あっという間にあの巨大クラゲを……」
「すげぇ……」

 玲奈と真一が驚いている間、北川はずっと考えていた。

「……神崎さん。」
「はい。」
「帰り支度を急ぐんだ。あの戦艦で帰ろう。」
「ええ!?」
「Gフォースに伝えたい情報がある、と言えば乗せてくれるさ。交渉と通信は私がやろう。頼むよ。」
「は、はい。」

 北川は無線機を取り出し、周波数を合わせた。







「黒木艦長、民間通信が入りました。」
「何だと?」

 黒木は無線を開いた。

『初めまして。応林大学考古学研究室の北川という者です。』
「日本の方?」
『勝手のお願いではありますが、我々を乗せていただけないでしょうか?』
「なるほど、フォライドの出現で空の便が動かないという事ですか。生憎、我々は……」
『Gフォースにどうしても伝えたい情報がある、と言えばどうですか?』
「?」
『1万2千年前の文明、と言えばお分かり頂けるかと。』
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