「G」という名の絶対者
2時間後
『ガルーダⅡ、現場に到着しました。』
現地の軍隊は既に壊滅状態。ガルーダⅡのみが、ゾエアと対峙する。
『清水でのデータがある。確実にこっちが有利だ。』
将治は冷静にゾエアのデータを見直した。ゾエアを抹殺するチャンス。その一瞬に全てを掛ける。
『行くぞ。超低温レーザー発射!』
いきなり超低温レーザーを照射する将治。ゾエアは腕を伸ばし、ガルーダⅡを落とそうとするが、それを回避するガルーダⅡ。
『将治!いきなり主砲の超低温レーザーなんか撃つな!』
『お祖父さん!大丈夫!このまま行く。』
孝昭の静止も聞かず、将治は攻撃を続ける。ゾエアの攻撃はガルーダⅡには届かない。
『そのまま……そのまま固まってしまうんだ……』
超低温レーザーの連続攻撃を受け、ゾエアの動きが鈍くなってきた。
『そろそろかな……』
将治は冷凍ミサイル発射準備を進めた。それと同時に、ゾエアの背中も開く。
『大戸、ベルリンに到着しました。』
時同じく、大戸もマジロスの所に到着した。大戸を警戒するマジロス。
『確実に行こう。冷凍ミサイル発射!』
大戸のミサイルボットから放たれるミサイル。しかし、マジロスはそれを飛び上がって回避した。
『この前のマジロスより動きが早い?』
『チッ……巨大化した地域によってそれぞれ特性があるとでも言うのか?』
マジロスは着地すると、すかさず光弾を放つ。
『確かに、この大戸はスーパーXみたいに素早い行動はできない。だが、』
マジロスの光弾を撃ち落としているのは、ホーミング・フルメタルミサイルだった。
『確かにこいつは、スーパーXとは違う!それを思い知らせてやろう!』
大戸は再び、冷凍ミサイル発射準備を進めた。マジロスは体を丸めて、飛び上がった。
『発射!』
再び放たれたミサイルは、マジロスの全身を氷で覆い尽くした。
『まだだ……まだ勝っていない……』
マジロスの氷は、あっという間に溶け出した。全身発熱。スーパーXはこれにやられたと言っても過言じゃない。
『氷が溶けた瞬間、三連ブラズマレーザーを浴びせてやれ。』
『はい。』
三連ブラズマレーザーの砲台がマジロスを狙う。マジロスはそうとは知らず、氷を溶かす。
『私のタイミングで撃て。いいな。』
マジロスの氷が溶け、丸めていた体を元に戻した。
『撃て!』
三連ブラズマレーザーがマジロスに向かって放たれた。顔を上げた瞬間の出来事に、マジロスはなすすべが無かった。
ドォォォォン
マジロスはブラズマレーザーに吹き飛ばされた。しかし、まだ戦意を失った訳では無かった。
『しつこい奴め……ホーミング・フルメタルミサイルを撃て。今なら当たる。』
『了解。』
三連ブラズマレーザーを受けて、マジロスも相当なダメージを受けていた。動きも鈍っている。
一方のガルーダⅡも、ゾエアが殻を破るのをじっと待っていた。背中からゾエアの新しい身体が顔を出している。
『(今攻撃しても、致命傷は与えられるな……)冷凍ミサイル発射!』
自分自身は感じていない焦りの余り、将治はミサイルを発射した。しかし、ミサイルはゾエアに致命傷を与えるに至らなかった。
『しまった……』
ゾエアは殻を全て破り、再びガルーダⅡと対峙する。
『大丈夫……殻から出た直後なら……』
そう言いつつも、自分の焦りで震えてしまっている手でなかなか合わない照準を合わせている間に、ゾエアは海中に飛び込んでしまった。
『何をしている!』
『すみません!……次は必ず……』
祖父からの厳しい言葉に動揺しながらも、将治は体制を整え直し、次の攻撃の機会をうかがっている。
『海中に超低温レーザーを撃てば、引きつける事はできそうだよな……ホーミング・フルメタルミサイル、発射!』
マジロスの体力が回復する前に、黒木は攻撃命令を下した。フルメタルミサイルによって、体中を貫かれるマジロス。
『……許せ。』
痛みに苦しみ悶えるマジロスを見て、黒木は思わず呟いた。
『……私も成長したという事か……』
『黒木艦長?』
『マジロスの死亡が確認され次第、パリに全速前進だ。浮かばれんかもしれないが、生きてて救われない命は、いっそこの手で葬ってやるのがいいのかもしれない。私らしくない考え方だがな。』
やがて、マジロスの動きが止まった。循環器系の停止も確認され、マジロスは絶命した。
『全速前進!次はパリのフォライドだ!』
休む間も無く、大戸は動きだした。マジロスの撃破を確認したのか、本部から通信が入った。
『大戸の初勝利、おめでとうございます。』
新城からだった。黒木はフッと笑みを浮かべて応えた。
『まだ、欧州には2体残っています。それに、大戸も主砲を温存したままなので。』
一方の将治は、ゾエアを誘き出す為に海中に超低温レーザーを放っていた。海中を逃げ回っているゾエアだが、超低温レーザーに追い詰められ、着実に陸地へ向かっていた。
『次は逃がさない。』
超低温レーザーの出力を上げた将治。ゾエアなら、二度同じ攻撃でも倒せると踏んだ。
グゴォォォォ
ゾエアが再び陸地に上陸した。ガルーダⅡはその瞬間を狙って、超低温レーザーを放った。
出力を上げていた為か、一瞬の内に全身が凍りついたゾエア。しかし、もう一度脱皮する事はできず、そのまま粉々に砕け散ってしまった。
『脱皮は最後の切り札だったという事か……』
『まったく……心配させるような戦いをしおって!』
無事に勝ったとは言え、孝昭も、そして将治自身も満足していなかった。
『お祖父さん、まだまだ補充訓練が必要みたいだね。』
『ああ。だが、ガルーダⅡの任務はひとまず終了だ。帰還しろ。』
ドイツ、フランス
国境上空
『艦長!フォライドが接近しています!』
『やれやれ、まさかあちらさんから出向いて来るとはな……』
パリに向かっていた大戸の前に立ちふさがるように、フォライドが飛来した。
『空中戦だ。油断するな。』
フォライドは向きを変えて、大戸と並んで飛ぶ形になった。
大戸は冷凍ミサイルをフォライドに向かって放つ。しかし、フォライドは翼を羽ばたかせ、ミサイルを吹き飛ばした。
シィャァァァァァン
突然、大戸の周辺に濃霧が発生した。大戸コックピットの視界が奪われてしまった。
『奴め……データの通り、霧を生み出すのか……だが。』
相手が生身の怪獣でない限り、霧など無用の産物に過ぎない。赤外線暗視が可能なのはフォライドだけでは無かった。
『冷凍ミサイルをあの翼に当ててやれ。』
フォライドの動きを止めるべく、瞬はロックオンを済ませる。
フォライドは油断していた。向こうからはこちらの居場所が分からないだろうとタカをくくっていた。突然飛んできた冷凍ミサイルをかわせるはずも無かった。飛行手段を奪われたフォライドは、真っ逆様に地上に落下した。
『アブソリュート・ゼロ、発射スタンバイ。』
『了解。』
大戸もフォライドを追うように、高度を下げた。その船体のドリルの先は、青白い光を発していた。
シィャァァァァン
両腕の動きを封じられたフォライドは、大戸を威嚇するように、翼を広げてみせる。
『アブソリュート・ゼロ、発射準備完了!』
『発射。』
大戸のドリルの先の青白い光がそのまま光弾になり、フォライドを貫いた。一瞬の出来事のような攻撃の後、フォライドは巨大な氷像となっていた。
『よし、とどめだ。』
『クラッシャードリル。システムオン。』
艦首のドリルが高速回転を始める。大戸はそのまま、氷像と化したフォライドに突っ込んだ。フォライドはバラバラに砕け散り、氷の塊になった。