「G」という名の絶対者
一馬の運転する車は、みどりと翼、そして睦海の亡骸を乗せて筑波に向かっていた。
「ガルーダⅡも出撃体制に入ったか……」
「青木さん、これから何が……」
「世界中で起こるのさ。人類と怪獣の全面戦争が。」
一馬も深刻な表情を浮かべていた。普段はそんな父の顔を見ない為か、翼の表情も曇っている。
「しかし、GフォースはDO-Mをどう使うでしょうか?」
「さあ……過去の惨劇を知る者なら、決して使わないだろうよ。」
「(こんな時、モスラがいてくれれば……)」
幼少期の事を頭に浮かべるみどり。幼い頃に植え付けられた記憶からか、モスラならなんとかしてくれるという想いが、みどりにはあった。
『車を止めてください……』
「うおっ?」
一馬は突然急ブレーキをかけて車を止めた。みどりも翼も、前に投げ出されそうになった。
「ちょっとお父さん!どうしたの?」
「いや、今誰かの声が……」
「ちょっと!」
改めて正面を見た一馬は驚いた。目の前には、みどりと同い年位の女性が立っていた。
「どういうつもりだ?」
一馬は窓を開けて、女性に向かって叫んだ。
「あの!どいてください!急いでいるので!」
「シエルが乗っているわね?この車。」
シエルの名前が出た。もう何が何だか分からなくなった一馬。しかし、そこはみどりが冷静に答える。
「あなた、シエル……じゃなくて、知ってるの?睦海を。」
「それ、彼女の本名ね。」
女性は車の後ろに回り、トランクを開けた。そして小さな端末を取り出す。
「ちょっと!人の質問に……ああ!?」
女性が端末を上げると、睦海の身体も持ち上がった。
「これは……どうして?」
「すぐに戻る。しばらく、この子を借りるわよ。」
「だから、こっちの質問にも……」
みどりが言い終わる前に、女性は睦海と共に消えてしまった。