「G」という名の絶対者


地下ドック




「万能要塞戦艦『大戸』
に出撃命令が下りました!」

 大戸のメインコックピット。その真ん中にある艦長席に座っていた黒木。この部屋に入ってからずっと、黒木は目をつむったままだった。出撃命令を伝えに来た瞬の声と共に目を開けた。

「了解した。総員配置に付け!10分後、『大戸』出撃する!」

 黒木は目の前にあるモニターの電源を付けた。艦内の情報はもちろん、司令室のメインモニターと情報を共有する事も可能だ。

「敵が多すぎる……新城さん!我々はどこに向かえばいい?」
『欧州へお願いします!アジア圏はガルーダⅡが引き受けますので!』
「了解しました。」

 黒木はヨーロッパに現れた怪獣のデータをダウンロードした。

「マジロスにフォライド、そして巨大クラゲか……クラゲのコードは?」
『こちらで、ドラーグンと統一させます。』
「ドラーグンか。エネルギーを目一杯準備しておけ!」

 


 一方で、ガルーダⅡも出撃準備を進めていた。パイロットに任命された将治。表情に若干の緊張が見える。

「何緊張してんだよ麻生。」
「とっ桐城?なんでお前がこんな……」
「お前が俺を乗せたままここまで来たんだろ?」
「あ……」

 思い出した。相模湾でゴジラと対話した後、すぐに緊急召集がかかり、健を降ろす間も無く、筑波まで帰還していたのだった。

「みどり達が今、こっちに向かって来てるらしい。」
「……何か、いつもの桐城らしくなかったから忘れていたんだろうな。」
「え?」
「ガルーダⅡの事についてしつこく聞かれる事は覚悟してたからさ。うるさくされると操縦に支障が出るから嫌だったんだが……」
「……いや。お前には関係ない。」

 睦海を失ったショックを隠しきれていない健。いつの間にか、将治も健も互いの心境が分かるまでの仲になっていたようだ。

 

「あっ!たけにぃみっけ!」

 場違いな声がドックに響き渡る。声の主をすぐに特定した健と将治は振り返った。そこにいたのは、美歌と和美。

「美歌……それに母さん?」
「健……心配ばかりかけるような事を……」

 こもりがちな声て怒りながらも健を抱きしめる和美。

「けど、誰から聞いたんだ?」
「青木さんから電話があって、全部聞いたわよ。」
「おじさんか……」

 一方の美歌は、健そっちのけでガルーダⅡの方に向かう。

「ちょっと美歌ちゃん!あんまり近づかない方が……」
「あれ?将治?もしかして将治パイロットなの?」
「あ……ああ。これから、怪獣を倒すために戦うんだ。」
「ゴジラもやっつけちゃう?」
「いいや。ゴジラは倒さないから、安心してくれていいよ。」

 優しい言葉で返す将治。誰もが皆、ゴジラを守ろうと思っている。

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