「G」という名の絶対者
「先生!こちらの撮影は終わりました!」
「ああ。君も休憩するといいよ。」
「はい。」
この数ヶ月間、この島には数人の日本人が滞在している。遺跡の発掘調査が目的だ。
指揮している中心人物。応林大学の北川教授だ。考古学に関しては世界的にも有名な学者だ。今回は、研究室にいる助手2人と、研究生3人を連れて調査に来ている。
「神崎さん。日本から例のデータは届いたかな?」
助手の1人、神崎玲奈は淡々と質問に答える。北川がこれまで会ってきた人物の中で最も真面目な仕事をこなすタイプだ。
「今確認したら、今日の昼には送られて来るとの事です。」
「すぐに用意できなかったのか……まあいい。早ければ明日には帰国できるかもしれない。」
「そういえば、真一見ませんでしたか?」
「遺跡の中でまた迷子にでもなったかな?」
「あのバカはもう……」
「しかし、そんな彼を見放さない私について君はどう思う?」
北川は入れたコーヒーを玲奈に渡し、自身もコーヒーを口にしながら質問する。
「え…………いや、サッパリ。」
「ふむ。彼の感性は極めて単純だ。素人並とは言わないがね。」
「はあ…………」
「だが、だからこそ、私や君が気付かない事に気付いてくれる。実際、彼はその感性を武器に修士を卒業できたんだ。」
「単純バカで卒業できるなんて……」
「勘違いしてはいけないよ。感性は単純だが、頭が悪い事には繋がらんよ。」
こんな北川の考え方を、玲奈は未だに全て理解できていない。玲奈はそんな北川の表情を不思議そうに眺めながらコーヒーを口にする。
「きっ北川先生!」
北川の予想は当たっていたようだ。遺跡の方から、真一が慌てて飛び出してきた。
「どうした?毒グモにでも咬まれたか?」
「奥に壁画がありました!」