ふらっとGINGA~フェジョアーダ編~











ふらっとGINGA
~フェジョアーダ編~











俺は、「心理」の爾落人の後藤銀河。
もうすぐ韓国に行こうかと思っている、ちゃんと大学は出た旅人・・・でいいんだよな?
だが、ビザの発行に一週間はかかるらしく、その間暇になったので・・・今は、今までみたいに関東をブラブラしている。
せめて行った事の無い所に行こうと思って、別に爾落人になってから空腹にならなくはなったけど、昔銀之助のじっちゃんがよく作ってたフェジョアーダでも食べようかと思って、ブラジル街がある事で有名な群馬の・・・
えっ?フェジョアーダって何かって?
・・・ブラジル版味噌汁?
説明は出来るけど、説明しても多分よく分からないと思うから・・・うん。ググってくれ。






とりあえず、フェジョアーダを求めて俺は群馬県の邑楽(おうら)郡・大泉町にある、一軒の店にやって来た。
名前は「レストラン ブラジル」。
日本で初めて出来たブラジル料理店らしい、だからこそのこの正直な名前と、やたら黄色と黄緑が目立つ外観・・・と言うか、ブラジル街のブラジルの店は割と大体はこのブラジル国旗なカラーだけどな?
別にフェジョアーダなら、他のブラジル街のレストランの何処でも置いてそうだが・・・ここのフェジョアーダは、一味違う。多分。




『イラッシャイマセー。』
「1人です。」
『オ好キナ席二ドウゾー。アッ、モウスグテレビノ撮影ガ来マスノデ。』




テレビの撮影か・・・テレビで俺を見た、となるとうるさく言って来そうなのに何人か覚えがあるから、手早く去るとするか?
客の半分がブラジル人で、日本にいるのにブラジルの観光客になった気分になりながら中央の席に座り、すぐにメニューを見て一応確認だけはして、「お決まり」の確認をされる前に店員を呼ぶ。




『オ決マリ二ナリマシタラ・・・』
「すみません、フェジョアーダを一つ。以上で。」
『フェイジョアーダ、デスネ?カシコマリマシタ。シバラクオ待チ下サイ。』




ブラジルの発音だと正しくは「フェイジョアーダ」なのかもしれないが、俺は「フェジョアーダ」と言う。
なんでかって?じっちゃんはそう言ってたから。ついでにWikipediaの記事名も「フェジョアーダ」だった。
料理を待っている間に、何故ブラジル料理のフェジョアーダをじっちゃんが知っていて、俺もこの店を知っていたのかと言うと・・・じっちゃんの親戚が昔ブラジル移民していて、その人の知り合いのブラジル人がこの町で店をやってると聞いた事があって、この店に来てみた・・・以上。
しかし、フェジョアーダと言っても「何それ?」とか「新手の敵キャラの名前?」とか聞かれないのは・・・なんか、良いような変なような感じだな?
まぁ、俺も最初フェジョアーダを見た時は「何それ?」って言ったけどな?






『フェイジョアーダ、デス。』
「ありがとうございます。」




来た来た、この真っ黒な感じは・・・間違いない。
フェジョアーダ・・・黒豆と豚肉と野菜、月桂樹の葉で作ったスープで、本気で作ろうとするとカレーと同じで二日かかる。
家庭で手軽につくろうと思ったら、缶詰を組み合わせて下ごしらえを省いて、煮汁と月桂樹の葉、塩、コショウで、本物の味に近づけるのがベター。
案外、柑橘系果実や青野菜、乾パンや焼きおにぎりとも相性がよかったりする。
一応、正規のレシピは存在するが、味噌汁と同じで家庭の味なので、バリエーションはかなりあり、日本国内のブラジル料理店も各々全く違う味付けとなっているといっても過言ではない・・・
あれ、なんか勝手に説明しちまったな?
だがしかし、ここのフェジョアーダは絶対に俺の舌に合うと確信がある・・・何故なら、俺のじっちゃんの親戚の知り合いのブラジル人の店のフェジョアーダだから。
まっ、あの店員がそのブラジル人なのかまでは知らないけどな?




「いただきます。」




さて、御託はいいから頂くとするかな?
牛肉・豚肉・ソーセージ・・・
みんなと仲良し、茶色豆の煮込み・・・ってな?






「・・・!?」




おいおい・・・じっちゃんが作ったフェジョアーダと、思ってた以上に同じ味だぞ?
例えば前に食った缶詰のフェジョアーダだと味がボヤけてて、あんまし豆の感じしかしないんだけど・・・ここのフェジョアーダは牛肉も豚肉もソーセージも入ってるから結構肉感あって、ビーフシチューの親戚みたいなコクがあって・・・
そうそう、肉がホロホロになるくらいが美味いんだよなぁ?ご飯にかけて食っても、また美味いんだよな?
あ~、これホームシックになった奴が食ったらダメなやつだな?確実に実家に帰りたくなるやつだな?
まぁ、俺は知りたい事もやりたい事もごまんとあるから、多分あと15年くらいは帰る気無いけど・・・蒲生村の実家に帰った気分にはなったな。
じっちゃん・・・吾郎、元紀・・・元気にしてっかな・・・ゲンキなだけにな?










「・・・ご馳走さま。すみません、お勘定。」
『アリガトウゴザイマス。1000円二、ナリマス。』
「ちょうどで。」
『1000円、チョウド頂キマシタ。』
「・・・それと、ゴトウ仕込みのフェジョアーダ、美味しかったです。じゃあ。」
『ゴトウ・・・ハッ!?キ、君ハ一体・・・?』
「ええっと・・・さしずめ『蒲生三十郎』、かな?まだまだ二十郎だけどな?」
『サン、ジューロー・・・』




かつて、ブラジルに渡ったじっちゃんの親戚やその他大勢の日本人も、きっとこの煮込みに・・・地球の裏側の味に、元気付けられていたのかもな?
久々に腹も心も中々に満たされた気がしながら手早く外に出ると、さっき店員が言っていたテレビの車が来ていた。
えっと・・・「孤独のグルメ」?
確か主人公があいつと同じ「ゴロー」って名前で、うるさい店員にアームロックかけたり、うおォンって言いながら人間火力発電所になる漫画だったよな?
最近深夜ドラマになったと小耳に挟んではいたが・・・「Season 2」って書いてあるから、そこそこ成功はしてるんだな?
実写化云々とか、そう言う野暮ったい事を言うつもりは無いが・・・




「この店を扱ったんなら、失敗だけはしないで欲しいな?」




・・・んっ?
これ、もしかして「心理」使っちまったか?
まっ、俺の「心理」なんて肝心な時にあてにならないし、どうなるか結局は「当たるも八卦、当たらぬも八卦」だしな?
とりあえず、そろそろ東武線から東京辺りに戻るとするか?と、なると・・・
さて、明日は浅草だ。何を食おうかな?






※この物語はフィクションです。
登場する人物・設定は架空であり、実在の団体・施設等とは一切関係ありません。










次回の「ふらっとGINGA」は、
「韓国・ソウル特別市内の宿屋・李で食べる自家製キムチ」
です。お楽しみに。






第一章番外編・終
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