羽衣さん、春島【初春】
チェンジ
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巨大化したハートに動揺したクローバーはタヌキの敵ではなかった
『終わり』
「っぐぅぅううああああ!」
壁を突き破り地に伏せた敵に、血のついた鉄扇を払う
「タヌキ!?」
『あっ、ペンギン
なんでここに?』
「お前こそ…なにがあったんだ?」
突き破った壁の向こうにいたのはペンギンだった
セイウチ親分たちと裏ルートから入ってきたのに、突然上からタヌキとズタボロの男が降ってきたものだから驚きが隠せない
「ちょっと暴れられたから仕方なく」
「ちょっと!?」
どう見てもちょっとどころの騒ぎじゃなさそうだが…
タヌキが降ってきた上の階の部屋を見上げる
壊れた天井に焦げ跡が残る壁
あれが…ちょっと…
ペンギンは深くは聞かないことにした
ふぅとため息をつくペンギンの首元を何かがかすめた
「うわっ!?なんだこれ!」
『鬼灯くん、おかえり
早かったね、流石仕事の出来る男』
“てれっ”
クローバー達と戦う前に飛ばした式神が帰ってきた
タヌキに褒められ、頭をかく様な照れた仕草を見せる
「て、お前のかよ
また変な技だな…鬼灯くん?」
『そう、式鬼神』
「しきき…?」
『しききしん、鬼灯くんはこれでも鬼神なんだよ』
これでもって…
ペンギンにはただの人の形をした紙にしか見えない
腰のあたりに手を置き踏ん反り返る姿に、見下されているのはわかる
式神とどこが違うのか
そもそも式神というのをよくわかってないペンギンには理解が出来ない
ペンギンは深くは聞かないことにした
ぺこぺこと身振り手振りでなにやら伝えてくれてるようだが、ペンギンにはさっぱりだった
『目的地はここの最下層だけど何箇所かセキュリティーがあるみたい』
「そっそうか…」
なんでもありだな…
味方で良かったと心底思うわ
己の船長といいタヌキといい、同じ人間という括りで括ってほしくない
「これはペンギン軍曹殿!こんなところにおられたか!目的の場所への入り口はケープ伍長とウニ2等殿が押さえましたぞ!」
ペンギンの後ろにセイウチ親分のところのアデリー隊長が追いついてきた
作戦も順調そうだ
「おう、ご苦労」
『?、ペンギン、セイウチ親分は?いっしょじゃないの?』
ペンギンたちといっしょに行動しているはずのセイウチ親分の姿が見えない
「親分はやる事があると別行動であります!」
『やる事って?今?やるなきゃいけない事?』
「しょっ、しょれはっ!」
アデリー隊長を持ち上げムニムニとホッペを引っ張るタヌキ
言葉では責めているが、半分はアデリー隊長のホッペを触りたいだけなのをペンギンは気づいている
「おいおい、アデリー隊長を責めても変わらないだろう…降ろしてやれ」
『えー』
「タヌキ准尉!はにゃしてくされ!!」
「ゼェゼェ…お前、ッはぁ、こちとら大変だったのにッ…ずいぶん楽しそうね」
『あっ、シャチとウニ』
「タヌキ!?またお前、なんて格好してんだ!!」
アデリー隊長の後を息を切らしてやってきたシャチとウニが、タヌキの姿を見て顔を真っ赤に染めた
クローバーとの戦いでところどころ破けたドレスから覗くタヌキの肌は、ウニには刺激が強かったみたいで所々汚れているウニのツナギが、更に自らの血で赤く染まった
「破廉恥…でござ…る…」
「ウニィ気を確かに!!」
『………』
「…中学生かよ」
仲良しか
まだまだ元気そうでなによりだよ
『あっペンギン、書くものある?
ここの地形大体分かったから』
「助かる」
ペンギンから受け取ったメモに書き込む
『出来た』
「おー、船長より分かりやすい」
『ペンギン、本音でてるよ』
ローは画力をカバー出来るほどの能力と才能があるから
と、タヌキは一応フォローは入れておく
まだ戯れてるシャチとウニを引っ張りペンギンは進んでいった
ふわりと浮き上がったタヌキはローの元へと戻る
『終わった?』
どうやら力の暴走だけでは、ローには敵わなかったらしいハートが床に伏している
必要以上にボロボロになった敵に同情もなくタヌキは落ちていたモコモコの帽子を拾いローに被せる
「ちッ…なんの情報も持ってなかった
使えねぇ…結局、赤の女王のところに行くしかなさそうだ」
ところどころ破けたドレスから覗くタヌキの肌を見て、ローは着ていたジャケットを着せた
サイズが合わなくて動きにくいという苦情は届かなかった
『ロー、ペンギンたちは今から金庫に向かうって
シャチたちといっしょにいるからもう鍵も手に入れてるみたい』
「そうか…順調だな」
『でも…』
「?」
『セイウチ親分の声が“聞こえない”』
「なに?」