羽衣さん、冬島
チェンジ
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「えーと、なにから答えればいいかしら?
とりあえず、ようこそ氷の国へ…と言っておこうかしら?」
「ここにいるのはお前らだけか?」
「そうね、今ここの生き物は夏眠でほとんど氷の下よ」
「夏眠?」
「今この島は夏よ
過ごしやすいでしょ?」
『夏なの?…まじか…』
聞いた話ではあるが、偉大なる航海では島ごとに環境の違う季節があると言う
ここは今、冬島の夏らしい
過ごしやすいと言うホワイト博士に、流石のローたちもその質問に対する答えは当然NOだが、外で遊びだしたペポだけが丁度よく過ごしやすそうにしている
ホワイト博士曰く、ここの冬は極寒の冬島・からくり島に匹敵するほどで、年によっては越えるほどらしい
「ここの冬は魔人すら凍死する寒さなのよ」
『まっ、まじん…?』
「えぇ…何百年も前の話だけど
襲ってきた魔人がここの寒さに耐えきれず凍死したらしいの
まぁ、数年前にある海賊団がその死体を持っていってしまったけど」
懐かしむようにずずっとお茶を啜ったホワイト博士は本当に人間のようだった
その姿にやはりタヌキたちの頭に疑問が生まれる
この島に上陸してまだ“人間”に会ってない…
いや人間どころか生き物にも会ってない
まるで人間のように振る舞う2体の人形以外には
そんな疑問の目に答えるようにホワイト博士は口を開いた
「私たちは…人間よ」
「人間?」
「信じられない?」
「とてもな」
ローはそう答えたが、タヌキは人間かそうじゃないかないかなんて曖昧なものだと思っていた
「でも本当よ…“元”だけどね」
「ホワイト博士ッ!」
飲み物と丁寧にお茶受けのアップルパイをお盆に乗せローたちの元へやってきたイッカクが会話を止めた
ホワイト博士は驚いた様子もなく、イッカクに優しい口調で言う
「イッカク…この人たちは貴女が連れてきた客人だもの
私はそれだけで信じる価値はあると思うわ」
「けど…ッ」
自分で連れてきたが、まさかホワイト博士がそこまで話すとはイッカクは思わなかったが、それを見通すようにホワイト博士はイッカクを見つめた
「貴女の直感当たるもの」
その一言でイッカクは何も言えなくなった
その事実は2人の間では常識であり、誰よりも信じていたのがホワイト博士だった
偉大なる航海の一番はじめの島というだけあって、偉大なる航海に挑む海賊たちが間間やってくる
2人はやってくる海賊と触れ合わず、この島の自然の脅威に慄く姿を蔑視してきた
だから、イッカクが客人を…海賊を連れてくるなんて今まで一度たりともなかった
イッカクが連れてきた客人
それだけで、ホワイト博士は隠し事をする気はなかった
そしてイッカクも、ローやタヌキに惹かれたのは紛れもない自分だと、ホワイト博士の話を遮るのをやめた
イッカク自身がこの人たちを信じたいと思ったのだ
「なにか問題あったか?」
「いえ…なにも?
いつもと変わらないわ」
まるで親が子をあやすように
これが2人の日常なのだろう
どうやらイッカクはホワイト博士には勝てないようだ
イッカクが拗ねながら納得したのが分かったホワイト博士は、ローたちへと向き直り話し始めた
「私たちの国は、厳しい自然と共存しながら海賊から隠れたり上手く取引きして生きてきたの
けど…ひとつの海賊が来て、状況はガラリと変わってしまった」