ご飯を終えるとタヌキはベポと甲板にでて日向ぼっこをする

ぐでぇと寝転ぶベポの隣に腰掛けて、新聞や本を読む

ローの医学書を始め、この船には本が多い

医学書や専門の本は難しくて読めないが、簡単な歴史書などの書物を読む

そこからタヌキはこの世界の知識を得ていた

ニュースのクーから受け取る新聞で最新の知識を得れば、タヌキのことを少し常識のない人だと思っても異世界から来たなんて到底思わない

社会に溶け込む羽衣狐の知恵だ

そして、あの一件があってからタヌキはよく尻尾を出すようになった

島に着けば目立つという理由でローに収納命令をだされているが、船内…特に今日のようによく晴れ日には尻尾を優雅に揺らしながら本を読む

そうやって出来たもふもふ空間に、しばらくして今日もきっちり隈をつけたローが埋もれ本を読む

だが、今日はその本の内容に気づいたタヌキがぺしぺしと尻尾で本を叩いて邪魔をする


『私は猫でも犬でもない！』


“しっぽでわかる！！〜にゃんちゃんの気持ち〜”

ローがただいま熱心に読んでいた本だ

タヌキの尻尾の存在を知ってローがいち早く手に入れたアイテムのひとつだ

他にもブラシなど買い込んでいることをタヌキは知らない

船内にはタヌキが知らないだけで、ベポ用とタヌキ用の大量のブラシが隠されている


「なんだ嫉妬か？構って欲しいのか？」

『違う！』

「そう書いてある
自分以外の物に集中している時、嫉妬をして邪魔してくるんだろ？」

『違う！もういい！』


プイッと顔をそらされ、タヌキの尻尾はピンとまっすぐたっていた

こりゃまた機嫌を損ねたか？

ちらりまた本に目を向けると


“ピンとまっすぐたてる
甘えたかったり、おねだり気分の時に見せるしぐさです
しっぽをピンと立てていたら、満足するまで十分にかまってあげてくださいね”


どんなに顔をポーカーフェイスにしようとも、尻尾で丸わかりだな

ふっと笑いながら、一番顔の近くにあった尻尾を撫でた

ピクリと反応すると、じゃれるように動かした

どうやら正解だったようだ

今日も穏やかだ


「敵襲ー！敵襲ー！」