羽衣さん、おにがしまの合戦【犬に論語】
チェンジ
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よたよたと起き上がった錦えもんたちにまた違う怒号が飛び込んできた
「なにをするんですか!?親分ッッ!!」
「狂死郎親分!!」
「うそだろ!親分!?」
『ん?』
「…おやぶん?」
「あいつは…」
三船長に気を取られていると、今度は何やら敵同士で喧嘩が始まっていた
こんな時に仲間割れか?
しかもそれは喧嘩所の騒ぎどころではなく、仲間内で船を叩き切るほど激しいものへと変貌していく
いよいよ様子がおかしい
「カイドウを裏切る気か!」
「裏切り?
義理も恩も“光月家”にしか持っていない!」
「光月家…?」
その言葉に錦えもんたちは顔を上げた
親分と呼ばれたのは、先日オロチ城で小紫を切り捨て…いや小紫を助けた狂死郎親分であった
「ヒョウ五郎親分に代わる都の刺客、狂死郎親分!?なぜここにッ!」
「気ぃつけろ!かなりの使い手だ!」
侍たちが己の刀に手をかけ、緊張感が増す
しかし、狂死郎親分が発した言葉は全員が予想外のものだった
「我が狂死郎一家200名!
あんた方の討ち入りに助太刀させて頂きたい!」
「「「「「!!!!????」」」」」
「なぜ!?いったいどういう義理が…!!」
そして、狂死郎は間違いなく錦えもんを見て言った
「とかく、思い出すのは錦さん!
40年前に都で起きた“山の神事件”!!
欲の皮突っ張った若ぇあんたが起こした事件だった!」
錦えもんを錦さんと呼び、旧来の知人であるようだった
驚いてその場にいた者は全員錦えもんをみた
「きん、さん…?」
『知り合い?』
狂死郎と呼ばれた男が頭に被ったカツラのようなエビフライのようなリーゼントを取ると、錦えもんが驚きの声を上げた
「で、傳ジローーッッッ!!??」
その名前は仲間の侍たちにも聞き覚えがあったようだった
「傳ジローっ!?
本物か!生きていたのか!!」
「いかにも!
すぐにでも名乗りあげたかったが、万が一を考え敵方に潜り込んでいた」
裏切り者であるカン十郎も衝撃の事実に、白く塗った顔を更に青白くさせて驚いている
「内通者に正体をバラされず…そのおかげで最後までオロチの信頼を勝ち取ることができた!」
傳ジローと名乗る男が連れてきたのは、なんと解放してた羅刹町牢屋敷の千人の侍達
更に傳ジローの朗報は続いた
「しかし錦えもんさん!さすが頭が切れる男だ!」
「!?」
「オロチ内通者がそばにいると感じたあんたはあえて身内に“トカゲ”と読ませ、真実は文字抜き!“ハト”と読む!
おかげで全員ハブの港の波止(はと)に避難できた!」
トカゲに変更と思わせて、本当の集合場所は元のハブのまま
傳ジローの船の後ろから予定通りの船と侍たちが姿を表した
戦力は一つも欠けることなく作戦は寸分の狂いもなく決行となる
周囲の侍たちはどよめき錦えもんを崇め讃えた
が、錦えもんがぽそりとこぼした言葉をタヌキは聞き逃さなかった
「トカゲじゃなくてハトって読むのか…ッ!!」
落語のようなオチで、忍者海賊ミンク侍同盟は前哨戦を勝ち取った