羽衣さん、鬼纏う
チェンジ
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『ロー、私を鬼纏って』
鬼纏(まとい)
本来、妖怪を憑依させる人間部分と、畏を扱う妖怪部分を併せ持つ者だけが使えるものだ
ローにタヌキを鬼纏うことはできない
しかし、ローのもっている鬼哭は妖刀…つまり妖力を持っていること言うことだ
人間のローに、妖怪の力を持つ刀にタヌキが憑依できれば
「…それをすればあいつは切れるか」
『できる』
訳も分からぬまま、タヌキの強い言葉にローは賭けてみることにした
どのみち普通にやっていてはローには切れないのだから
見た目以上にダメージを食らっている2人
勝負をかけるなら短期決戦しかないと踏んだ
「そんな力…どこにあるというんだ母上」
だいだらぼっちとの戦いでタヌキの妖力はほぼなくなってしまった
『全開ではないのはお互い様であろう、鵺…それに力ならまだある』
タヌキは長く美しい髪を尻尾で短く切った
手に持った髪が青白く燃えあがる
その炎はタヌキへと伝っていき、タヌキの傷がみるみると消えていき、胸の傷も完治までとはいかなくても血が止まっている
『ロー!目をつぶって!集中して妖気を全て刀へ流し込んで!!』
「妖気なんてねぇよ!」
タヌキの無茶苦茶な説明に、ローは舌打ちをしながら従った
「させるか!!」
『ッ、ゔぅうう!』
「タヌキ!!」
目をつぶったローにタヌキの叫び声が届く
ローが思わず目を開けようとするのをタヌキが止めた
『私を信じて!私もローを信じる!私の命の全てをかけて』
「っち、うるせぇ!俺はお前を疑ったことなんて一度たりともねぇ!!」
言葉とともに鬼哭がグッと重くなる
鬼哭に入った力が自分の身体に入ってくるのを感じる
「これは…」
目を開けたローは自分の変わりように驚いた
美しく真っ黒な羽衣を纏った姿は、とても人間には見えなかった
目の前からタヌキの姿が消えた
ローは自分の背中にタヌキがいるのを感じた
「その隙…待つ私ではない」
“ロー、左後ろ!!”
頭に鳴り響いたタヌキの声
それに気を取られローが逃げ遅れると、左後方からきた鵺の攻撃に羽衣が反応して防いで見せた
羽衣狐の胎内から生まれていない鵺は畏を…力を僅かしか纏えなかった
「っち、流石は母上と言ったところか」
「…便利な能力だな」
通常より何倍も軽くなった体で空をかける
妖術で空すら浮かべるようになったのだ
タヌキのサポートもあるが、ローがこうもあっさりと使いこなすなんて…タヌキは驚いた
そのまま、ローは鵺に一太刀入れると腕の半分まで切れた
鵺もローのスピードについてこれず低く唸る
「一発でこれか…すごいな」
まだまだ余裕そうに振る舞うロー
新しい力をもっと使ってみたいという風で、タヌキは恐ろしくなった
やっぱり自分がついていったのは只者ではなかった
完全体ではないといえ鵺を相手にここまでの余裕だなんて嬉しい誤算だ
タヌキは、だいだらぼっちのときからやれば良かったなんて少し後悔した
「くそっ人間ごときが…ッ」
もう時間の問題だった