羽衣さん、運命を知る
チェンジ
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犬神が部屋から去り、残ったタヌキとハートの海賊団は重たい空気に包まれた
その中心にいるタヌキも何も喋らず、犬神が出ていった扉をずっと見ていた
「なぜ、くだんが死んだこと言わなかった」
『…本当のこと言ったらみんな絶対来させてくれないと思って』
「当たり前だろ!こんなっ…タヌキを見殺ししようとしてる連中なんて」
『それじゃあ困るの
件の予言は絶対だから』
「本当にそれだけか?」
『………』
「タヌキ、答えろ」
『…この件の首謀者に1人だけ心当たりがある
それを確かめに来た…でも本当に、まさかだいだらぼっちの封印が解かれているとは思わなかった…』
平然を装うタヌキの声が震えているのがおかしく見えた
いつもの知ってるタヌキじゃない
「タヌキ、ピリピリしてる…俺、イヤだ」
思わず漏らすベポの耳がヘタリと下がる
その場にいるクルーの殆どが、タヌキの漏れ出した畏…覇気にあたっている
そのこともタヌキは気づかない様子でローの表情は険しくなる
『本当にくるの…?』
「当然だ」
『………』
たっぷり一間とったタヌキが尻尾から刀を取り出した
『妖刀だ…ローの鬼哭もあるけど…これなら妖力の持たなくてもみんなの実力なら二本あれば四肢を切れると思う
その間に犬神からもらった札を貼ればいい』
「わっ、わかった!」
タヌキから、妖刀を受け取ったシャチはそのヒヤリとした感覚に汗をかいた
「タヌキはどうするの?」
『私は…だいだらぼっちの本体…首を狙いにいく』
「1人で!?」
『…もともと全て1人でやることだから』
タヌキがなにをそんなに思い詰めているのか、その場にいた誰も分からなかった
ぎゅっと爪が食い込むほど強く握るタヌキに、ローの重たい口が開いた
「お前らしくないな、タヌキ」
「キャプテン…?」
「そんながばがばの作戦、到底うまくいくとは思えねぇ」
辛辣な言葉がタヌキに刺さる
そんなことタヌキが1番分かっていた
『…私らしくない…私らしいってなんだ!』
やっぱりここに来てから…いや【ぬらりひょん】の名を聞いてから彼女はおかしい
『やっぱりこれは私1人でやる
みんなに迷惑はかけられない…』
「本気で言ってんのかよ!ヤベェやつなんだろ、そのだいだらぼっちってやつは!」
「…勝手なことをするな
船長は俺だ」
『私は、みんなを死なせなくないんだ!』
「タヌキ…」
『死ぬのは私1人で十分なんだ…
私のせいでローがみんなが死ぬというなら…私はこの船を降りてもッ』
「タヌキッ!それ以上言うなら叩っ斬るぞ!!」
『ッッ!!』
鬼哭の刃がタヌキの首筋に当てられる
タヌキは【ぬらりひょん】の名を聞いてから、自分の中の羽衣狐が大きく荒ぶるのをずっと感じていた
永い永い羽衣狐の生
時たまその闇に本当に飲まれそうになるときがあった
ずっと…ずっと抗ってきた
平和な日本で笑って泣いて…普通に生きてきた自分を忘れないように
笑いかけてくる者も羽衣狐を通して見ているんだと疑心暗鬼なっては頭を横に振った
抗って抗って、それがやっと解放された世界ではじめてできた羽衣狐ではない自分を仲間だと言ってくれる人たち
タヌキにとって、ローたちとみんなと出会えて…心の底から笑えてこんなに笑いが絶えないのはいつぶりかわからなかった
羽衣狐ではなく自分自身が守りたいと思ったんだ
もしこの件の首謀者がタヌキの予想通りならただではすまない
だけど、タヌキは逃げるわけにはいかなかった
あいつは自分がやらないといけない
あいつだけは…
だから…
「タヌキ、お前は今何をみてる」
『何をって…ッ!』
ぐるり
タヌキを取り囲んだハートの海賊団の目
自分をなくしたタヌキには今までそれが見えていなかった
「質問に答えろ、タヌキ」
『………っ』
「タヌキ、お前が今いるところはどこだ」
『……ハートの海賊団』
「お前の仲間は」
『…ハートの海賊団』
「お前がついていくのは誰だ」
『トラファルガー・ローッ』
「分かってんなら下らねぇこと言ってんじゃねぇ」
刃を下ろし、乱暴にでも優しくローはタヌキの頭を撫でた
「お前を縛るものなんてねぇんだ…心配しなくてもお前はもう自由なんだよ」
タヌキの目から涙が止まらなかった
ここへ来て初めて息ができた気さえした
仲間は守るだけじゃなくていっしょ戦ってくれるんだ
緩んだタヌキの空気にホッとするクルー
自分たちが知ってるタヌキだ
潤んだ瞳でおいおいまだ戦い前だぜという茶化す声も、今のタヌキには涙の元にしかならなかった
「四肢の封印くらいお前らで出来るな」
「「「アイアイ!キャプテン!」」」
「タヌキ…俺の仲間を甘く見んな
作戦を練り直す…俺とお前と首を獲りに行く…いいな」
『…アイアイッキャプテン!』
タヌキが初めてキャプテンと呼んだ
ローによる作戦が決行される