羽衣さん、お迎えが来る
チェンジ
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タヌキと荼枳尼(だきに)と呼ばれた女は知り合いのようであったが、同時に只ならぬ様子でもあった
特に普段のんびりした雰囲気のタヌキの空気が張り詰めている
『どうして貴方がここに…』
「どうして…?私がいる理由はひとつしかないじゃない
“迎え”に来たのよ」
コツコツとタヌキに近づきながらそう女は言った
その言葉に動揺したのはクルー達だ
「やっぱり、あなたがいない世界はつまらないわ…いっしょに帰りましょ?ね、タヌキ」
荼枳尼がさらにタヌキに近づこうとすると刃が塞いだ
「それ以上タヌキに近づくな」
「…貴方誰?」
「タヌキはうちのクルーだ
今更なにしに来たかは知らねぇが、勝手なことは俺が許さねえ」
「ふーん、そう 」
ローに睨まれてなお、平然としてそう答える
『荼枳尼…なんで迎えに来たの
“ここ”にくるのだって容易ではないはず』
「やっぱり貴女は勘が鋭くって素敵だわ!」
『荼枳尼!』
先程ローを見ていた冷たい目ではなく潤んだ目でタヌキを見る荼枳尼に珍しく声を荒げたタヌキ
ベポやシャチがびくりと震えた
「件(くだん)が…生まれたのよ」
随分と息のある声で言われたその一言でタヌキの目に動揺が走り殺気が漏れた
「くだん…?」
「貴女を呼んでるのよ…貴女しか倒す人がいないって
だからタヌキ…いっしょに来てくれるわよね?」
件もタヌキの動揺の理由も誰も分からなかったが、ただ事じゃないことはみて取れた
『………わかった』
「タヌキ!!」
静かに頷くタヌキに思わずベポが声をあげた
「駄目だ」
「船長」
「こいつがお前についていくことは俺が許さない」
それと同じくらい早くローが否定する
「そう言われてもねえ…困ったわねえ、どうする?タヌキ」
『ローたちは関係ない…』
「てめぇ、どの口がいってるかわかってんのか」
『…もし行かせてもらえないなら私はこの船を降りても構わない』
ローの問いかけに、タヌキは絞り出した声でそう答えた
タヌキ!と咎める声があちこちで上がる
「タヌキ、それは本心か…」
ローの確かに怒りを含んでいる目で見下される
『もちろん』
その目を見続けることはタヌキには出来ず下を向いた
「…ちっ、おい尼頭巾屋
俺たちも連れてけ」
「そ、そうだよ!
だってタヌキが困ってるんだよ!
仲間が困ってる時に助けてあげなくちゃ!!
俺たちが、そのくだんって奴を倒せば、タヌキはまた戻ってこれるんでしょ?」
「いいえ」
「えっ?」
「だって、タヌキはこれで死ぬもの」
「「「「「はぁあ!?」」」」」
「ど、どういうことだよ!」
「タヌキが死ぬって」
「おいてめぇ、適当なこと抜かしてんじゃねぇぞ」
ローに襟を掴まれ足が浮いているというのに荼枳尼は表情を変えなかった
「おい、タヌキも黙ってないでなんとか言えって」
『それが…本当に件が言ったなら…私は死ぬ』
下を向いたままのタヌキの答えにローが吠えた
「俺がそのくだんってのを殺る、タヌキは殺させねえ!」
「ほう…」
「急ぐ旅でもねぇんだ…ここまでクルーを馬鹿にされて許せるほど俺は出来ちゃいねぇ!!」
ローの荒らげた強い言葉に、タヌキは顔を上げた
こんなにキレたローはみたことがない
それは古くからの付き合いであるベポやシャチ、ペンギンですら、数えるくらいしか見たことがないことだった
そんなローに荼枳尼はニタリと笑った
「いいわ…私タヌキを連れて来いとは言われたけど、タヌキ以外は連れてくるななんて言われてないもの」