羽衣さん、バレる
チェンジ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あらら、こんなところに海賊とは…おじさん仕事するつもりはないんだけど」
「大将、青きじ…」
「なんで青きじがここにっ!?」
『あおきじ?きじさん…?』
木の陰で寝転ぶ大男はそう呼ばれた
タヌキは少し期待した目で見たがベポのように動物の姿はしていなかった
…なんだろう、ここの世界の人たちは名前に動物を入れるのが流行っているの?
「なぜ大将がノースブルーなんかにいるんだッ!」
「うーん…サボり?」
声を荒らげいつになく乱暴に鬼哭をぬいた
そんなローの様子にただ事ではないとタヌキの目つきも変わる
「room…ベポ、タヌキ、ここは俺が止める、はやく船に逃げっ」
ローが地面に叩きつけられた
「…こんなところで出会うとはね…トラファルガー・ロー
これでもちゃんと手配書チェックしてるのよ?」
「キャプテン!!」
『ロー!!』
瞬く間に2発目をローに喰らわそうとする青きじの背後からタヌキが鉄扇で一撃を入れようとするも、青きじの背中から氷の塊が現れた
『氷っ!?』
その攻撃の衝撃でタヌキごと鉄扇は弾かれ大きくとんでいった
少し離れた大木にぶつかりようやく止まった
『ゔぅ…』
「ふむ…あそこから急所を外すか」
「タヌキ!!
ちっ…counter shock!」
「残念…効かないのよ、俺氷だから」
青きじから離れようとするが純水でできた青きじの氷は絶縁体といっていいほど電気を通さず、逆にローの腕をつかまれてしまう
「ベポっ!
早くタヌキを連れて逃げろ」
「でも、キャプテン!」
「あそこにぶつけられたお嬢ちゃん…彼女をここにおいていってくれたらこの場は見逃す…ってのはどうだ?」
「…!?」
「こっちも人手不足でさあ…彼女ならまだ海賊に染まりきってなさそうだし、女の子だしかわいいし…」
その低い声が上げた言葉に目を見開く
表情と声色では、それがどのくらい本気か読み取れなかったが、静かに口にされた言葉はすごく重たかった
何かを見透かすようにして睨む瞳に見下される
「……お前…ナメてんのか?」
「あららら…かなり譲歩した提案だと思うんだけどね…でも残念、弱い奴は負け方も選べねぇんだ」
これが現実なのよ
「そんなん、聞くわけねェだろうが……タヌキは俺のだ」
「曲りなりにも船長の座に着いてんなら、この場でどうするのが正しいかぐらいわかるでしょうに…」
「うるせぇ、俺に命令するな」
「若さは時に無鉄砲だねぇ」
「ぐああ!」
ローの鬼哭を掴む手が鬼哭ごと凍っていく
…ここで俺は終わっちまうかッ!?
こんなところで終わるわけにはいかねぇのに!
大将という圧倒的な力を前に、ローは初めて感じる感情に心臓が震えた
「アイスタイっ…!」
青きじとローの間にナニカが横切った
思わず青きじは体を反らせ、そのまま後方にバク転しローから離れた
そのナニカは優しくローを包み込むとベポのもとに下ろした
「タヌキ、お前…それ」
「へぇ、そんなの隠し持ってたんだ
ノースブルーにこんな娘がいるなんてね…サボってみるもんだ」
『ベポ、はやくローを連れて逃げて』
そこにはふわり八本の尾を携えたタヌキがふわりと宙に浮いていた
はじめて魅せるその姿にローは聞きたいことが山積みだった
「離せっ、ベポ」
『ベポ、早く!』
それはベポにとって身を裂くような決断だった
自分の弱さをこれほど後悔したことはない
付いていくと決めたキャプテンの命令も仲間を守ると決めたことも自分は出来ない
その円らな目にめいいっぱい涙を溜めたベポ
『ベポ 、大丈夫すぐ追いつくからね
お願い、ローのこと頼めるのベポしかいないの』
「アッ、アイアイ!!」
「ベポッ!!」
『いいこね、ベポ』
タヌキに優しく見られてその言葉にベポは走り出した
ローが反抗しようとするも、その体の半分は凍りつき簡単にベポに抱えられてしまう
「へぇ、言ってくれるじゃないの」
青キジの素早い攻撃で左手がタヌキの脇腹を貫いたのが見える
「タヌキ!
くそ!ベポ、止まれ」
ベポは聞こえないふりをして振り向かなかった止まらなかった
振り抜いたらもう進めないから
「アイアイーーッ」
ベポはもっともっと強くなることを決意した
ベポがロー連れて逃げたことを確認してタヌキは安堵の溜息をついた
「捕まえた…安心している場合じゃないんじゃない?
もう逃げられないね、タヌキちゃん」
『逆だ…捕まったんだ、貴様が
【四尾の槍 "虎退治" 】』
その手をガシリとつかむと、尻尾から飛び出した槍が青キジを捉え倒れこみ地面に串刺しにされた
足でさらに深く刺すもそれは氷の塊となり、刺されたはずの主の余裕ある声がタヌキの背後から聞こえた
背後からくる攻撃を尾が反応して防いだ
『便利な能力だな…』
多分、ローと同じこいつも能力者なのだろう
能力者というのはどいつもこいつも常識の通じないびっくり人間の集まりなのだろうか…
槍を刺されて平気って…卑怯だ
「その年で能力を自分のものにしてるとは…まさかここまでやるとはねぇ」
『無傷のくせによく言う』
やはりこのままじゃダメか
タヌキは“畏”を纏おうとした
ローと出会った時のようにタヌキの雰囲気が変わった
「…君、強いね
よかったら本当に海軍に来る?推薦状書くよ」
『私が海賊王にしたいのはただ1人、トラファルガー・ローだけよ』
「…そぉ、ざぁんねん」
そういうとぱたりと寝転んでしまった
『やらないの?』
「だって、もうお迎えっぽいし…おじさん無駄な争いはやらないの」
『そうなんだ…?』
海軍らしくない青きじの言葉に納得して“畏”を解くタヌキ
危機感なさすぎじゃないこの子…
先ほど纏ったオーラとの落差に今度は青きじが戸惑った
そんな珍しい青きじに元師ですら驚くだろう
その時、2人を…いや島全体を円が包んだ
「お別れみたいね…バイバイ、狐ちゃん」
『あっ、ばいばい、キジさん』
丁寧にお別れの返事までしてくれた少女はしゅんと消え、後には不自然な石が転がっていた
海賊らしくない彼女…やっぱり真剣に海軍に誘うべきだったか
遠くの方で出航する船が見える
今からじゃ追い付けないだろう
「トラファルガー・ローとタヌキちゃん…ね」