羽衣さん、働く
チェンジ
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晴天
タヌキはシャチとペンギンと一緒にシーツを干していた
海賊団と言う割に、この船の船員は少ない
聞けばまだ航海は始まったばかりだと言う
「お前、馴染むの早いよな」
『そうかな?』
言葉遣いももう友達のようだ
「あんなに無理矢理乗せられといて
普通はもっと抵抗するだろ、船長にも物怖じしねーし、敵襲にも参戦しねーって」
『あっそっか…』
普通はそうか…
永年生きてると、ちょっとやそっとのことをまっなんとかなるかと楽観視してしまう
タヌキの普通が普通から遠ざかってることに本人は全く気づかない
船長のローはともかくあんなに強引に乗せた人の仲間だと思えないほど陽気な人たちだ
『シャチたちは?こんなちんちくりんなやつが勝手に仲間になって嫌じゃない?』
「ちんちくりんって自分で言うなよ
まっ、船長のわがままは今に始まったわけじゃねーし
船長の見る目は確かだからよ」
「勝手はするけど全部にちゃんと意味があって、ちゃんと俺たちも守ってくれてるんだ」
『…そっか』
あの人も、私が知らないだけで本当はいい人なのかもしれない
まあ、あんなドクロマークを掲げてていい人はないか
「それに…こんなむさ苦しいなかに女がいるってだけで俺は幸せだね」
「ありがとう、タヌキ
春の風を運んできてくれて」
『その手をそれ以上近づけたら粉々にする』
いつのまにかタヌキの手の中にある鉄扇にシャチたちは冗談だよとすくむ
「うんうん、タヌキはすっごく魅力的なメスだよ!」
隣で釣りをしていたベポが会話に割り込みタヌキに抱きついてきた
喋る熊、ベポがいることもそれを受け入れているみんなもタヌキにとっては不思議である
これが普通か言うとまだ外の世界を見ていないタヌキは分からなかったが、こんなに可愛いのなら喋っててほしい
「メスって言うな!
ってかベポ!お前だけタヌキに抱きついてズリィぞ!」
「…ごめんなさい」
「「打たれ弱っ」」
とても海賊とは思えないやりとりにくすくす笑うタヌキ
「ずいぶん楽しそうだな」
「ぁあ!キャプテン!」
「馴染めたようだな?」
『まあ…』
そうかとローは満足げに笑った
もう日が高いのいうのに寝起きを隠そうともしない
初日にローのベッドで寝たことを思い出してタヌキは少し頬を赤らめた
その横でペンギンが本の読みすぎだと愚痴っている
「アイアイキャプテン! !大物がきた!!」
ベポが垂らしていた釣竿が大きくしなった
「ぃよっしゃ!!きたか!」
「手ぇ離すなよ、ベポ!!
「もちろん!」
洗濯物もそっちのけでベポに加戦するシャチとペンギン
三人でも上がらないなんてどうやらよっぽど大物らしい
手すりに手をつきながら下を覗き込む
『まじか…』
ゆうに三十メートルは超えているであろう大きな影が船の下に現れる
あまりの大きさに言葉も出ない
本当に魚?
これはちょっと…危険じゃない?
釣ったところで甲板に乗るかどうかも怪しいよ?
とタヌキの心配をよそにベポたちは釣る気だ
『ベポ、あの大きさは無理じゃない?』
「大丈夫だよ??」
「おら、協力しねぇやつはどけどけ」
絶対大丈夫じゃないよね?
というタヌキの意見は却下され、隅に追いやられる
「いくぞ!!」
「「「せーのっ!!」」」
ベポとシャチとペンギンの掛け声と共にぐっと釣竿が引き上げられた
途端に大きすぎる魚が宙を舞う
全ての形とらえられないまま
このままじゃ船ごと潰される
そう思い、尻尾で弾こうと力を込めた瞬間、隣の影がその魚に向かって飛んでいった
「"room"」
ロー…?
そう思った時にはドシャっと背後で音が聞こえた
トンっと綺麗に着地するローとバラバラになった魚がそこにあった
血は出ていないしちゃんと動いているのに、文字通りバラバラなそれを見つめる
「今日はご馳走だあ!!」
大太刀、鬼哭を握り締めるローがやったということは考えなくても分かった
『すごい』
「ふっ、当然…」
タヌキの言葉にローが反応する
とてつもなく自信家だ
寝癖をつけてるのも様になってるのが、少しムカつくくらい
けれどその言葉通り、凄い技をこの男は一振りでやってのけたのだ
「お前ら、さっさと片付けろ!」
「アイアイキャプテン!」
びちゃびちゃになったシーツに、タヌキはため息を吐いた