「西にある無人島を龍の巣とこの島の人間は呼ぶ」

「龍の巣？」


島につき情報を集めていたローに、この島の語り部はすらすらと話を続ける


「その島に入った船はことごとく島の主の龍に襲われ島に帰ってくることができない！」

「龍…ねぇ」


ローは隣にいるタヌキに目を向ける

人ならざるものならいつも見ているが、その龍もこんなにのんきなのだろうか

当の本人は、千代紙を切って張り付けたような街並みに、キョロキョロと落ち着きなく周りを見渡している

じっと見ているローの視線にも気付かずに

潮風が吹き抜けて、語り部は扇を広げまるで歌舞伎役者のように語り続ける


「特に今日この日！盆の十五日には決して古島に出てはならない…というのがこの島の決まり
しかし、その昔！それにも関わらずなんたろうことか、しきたりなど聞いたことかと、この島に来た若い海賊が船を古島へ出したと言う…そして！！」


急に大声をだした語り部に、キョロキョロとしていたタヌキも驚いた様に語り部をみた


「霧立った視界に急に崖のように切り立った大きな龍が現れた！
その龍は目の前にいると言うのに気配がない…よもや幻覚かと思ったが、その場にいた全員が見えるという！！
海賊の船長は怯えて持っていた刀で立ち向かうが時すでに遅しッ！！その場にいた全員がッとお客人！続きを聞いていかぬのか！」


金は渡したと最後まで聞かずにロー去っていき、その後をタヌキも追った


『最後まで聞かなくていいの？』

「全員死んだんなら誰があの話を持って帰ってきたんだ？」

『あっそうか』

「どこ行っても怪しい話はかわらねぇ…だが、その島丁度いいかもしれねぇな」


隣でタヌキも先程の戦いで同じことを思ったのか、ローに黙って頷いた

鬼纏を強くする必要がある