羽衣さん、夏島【晩夏】
チェンジ
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『べぽー!べぽー!どこにいっちゃのー?』
先を急ぐあまりベポとはぐれてしまったタヌキ
耳を澄ましてベポを探すが、小さくなったせいか聞こえにくい
苛立ったように尻尾がゆらゆら揺れている
『…だれかいりゅの?』
すると、近くでベポでもローでもない聞いたことのない声と音がする
なにやらザワザワと騒がしい
もしかしてクマさん?
音のする方の部屋を覗き込むと、そこには大きな船に荷物を運び今にも出航しようとする海賊だった
どうしてこんなところに海賊が?
海軍もいると言うのに大胆な奴らだ
疑問に思ったタヌキは影から耳を澄ましさらに覗き込んだ
『!!…ドンキホーテ・ドフラミンゴッ』
そこで、タヌキの目に飛び込んできたのは船員に指示を出すドンキホーテ・ドフラミンゴだった
『…なんで…こんなところに…』
冬島でローの口から聞いて以来、タヌキはローに隠れ少しずつ情報を集めていた
ローといればいつか出会うと思っていたが、こんなところで出会うとは
まさか偉大なる航海の前半の海に王下七武海がいるだなんてローも夢にも思わない
こんなところになぜ海賊がと思ったが、王下七武海なら海軍の目も気にならないのだろう
ドフラミンゴは戦艦を一隻、この島でしかも海軍経由でクマさんに受注し、たった今出航しようとしていた
少しでもズレれば会うこともなかったのに
目の前の現実を受け入れられずタヌキはピクリともその場を動けない中、ドフラミンゴが満足そうに眺める船のなかでは着々と出航の準備が進んでいる
ピタリ
その瞬間、タヌキとドフラミンゴの目があった
「フッフッフ、可愛いお嬢ちゃんじゃねぇか
どうしたこんなところで迷子か?」
垂れ流されるドフラミンゴの覇気にタヌキに汗が流れる
こいつ…やばい
どこまでも深く暗い
闇そのもののような男だ
サングラスで見えない目の暗闇に吸い込まれそうだった
幸いにも薄暗いドックから見える暗い通路から覗くタヌキは、ドフラミンゴの位置からはタヌキの耳は帽子で隠され尻尾も見えない
珍しくタヌキは尻尾をくるりと足の間に巻き込んでいる
小さくなってしまったタヌキをドフラミンゴはただ子供とナメている
バレないうちに逃げてしまいたい
今の自分では全く敵わない
いや…元の姿だって敵うかどうかわからない
「そういえば、この辺りうろちょろしてるガキがいたなァ
お嬢ちゃん、そいつの友達か?」
一歩、また一歩と大きな足で近づいてくる
ドフラミンゴにしてみれば、子ども1人に見られたところで何も変わらないのだろう
邪魔になれば消せばいい
ドフラミンゴが何を考えているかタヌキにはすぐにわかった
「こんなところにいたら、危ない海賊に襲われちまうぜ」
近づいてくるドフラミンゴに後ずさるタヌキ
これ以上近づかれては尻尾に気づかれてしまう
流石に尻尾がバレてはドフラミンゴもただでは逃さないだろう
逃げなきゃ
動け!
動け、私の足!
「若?どうされました?」
『!!』
ドフラミンゴの部下が話しかけてきた、一瞬の隙をついてタヌキは逃げた
「あぁ、猫がいたがどうやら逃げられちまったようだ」
「追いますか?」
「いや、気にするな」
「若様、出航の準備は整っております!!!」
「そうか…じゃあな嬢ちゃん
20年後、イイオンナになったらまた会おうぜ
フフフフフッ」
気味の悪い笑い声を上げながらドフラミンゴは自身の船に乗った
ローはあんなやばい奴を倒そうとしているの?
落ち着け
落ち着け
ドフラミンゴから逃げた後も、タヌキの心臓の鼓動はバクバクと鳴り止まない
…この事はローには黙っておこう
ナニがあったわけでもない
ドフラミンゴがナニをしたわけでもない
それに…
伝えたって今の私にはローの力にもなれない
その事実がタヌキに重くのしかかった
それより今は、ローにクマさんのことを伝えなきゃ
それが今の私に出来る事だ
溢れ出る想いに蓋をしてタヌキはローの元へと駆け出した