羽衣さん、にゅうすぅぱぁすたぁとの出会
チェンジ
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買う気もないヒューマンショップに連れてこられたタヌキは、メインステージの壁に飾られた見覚えのあるマークに気付き黙ってローの隣に座った
少し不機嫌にも見えるが大人しく隣に座ったタヌキにローは少し乱暴にタヌキの頭を撫でた
あれはドフラミンゴのマークだ
何も言わずともある程度理解を示すタヌキや、理解せずとも信頼して後ろに立ってくれるベポたちを、ローは有り難いと思う
きっと自分の探し人はここにはいないと会場内に入った時うすうす感じたが、念のためしばらくここにいることにした
半分以上席が埋まる頃に、会場入り口隣の最後方に見知った顔があったがさして問題もない
『ロー、お行儀悪い』
「今更俺に行儀なんてもん求めるな」
キャプテン・キッドに中指を立てたローにタヌキがつっこむも、効果はないようだ
噂に聞くイかれた麦わらが見れなかったことは残念だが、まあこの海を更に進むなら必ず会えるだろう
ローの回る頭で考え事をしているうちにオークションが開始となったが、特に変わったこともなく進んで行く
そう…変わらない
変わらないことだ
高値で買われようと
自ら命を断とうと
世界は変わらず周っていく
タヌキは誰よりも知ってる
人間の溢れる負の感情を吸収し生まれてきた…それが羽衣狐なのだから
数秒目を瞑りタヌキは目の前の現実をみる
ステージでは今日の超目玉の人魚が飛び出したと言うのに、ローのお目当ての人物はやはりこの会場にはいないようで、ローの面白くなさそうにその表情も浮かばない
彼のその目的が果たして“新世界”で叶うのかは、まだ誰にも分からない
面白くない顔するならさっさと帰れば良いのに
あまり居心地の良くない会場にタヌキは気づかれないように小さくため息をついた
「ぁぁぁあああぎゃああああ〜〜!!!!」
「「「「!!?」」」」
いきなり入り口が大きな音を立てて壊れた
いや壊された
会場は驚きのあまり静まりかえり、視界は土煙が舞い塞がれた
しかしそれも一瞬で、犯人はすぐに大きく叫び姿を現した
「なんだお前!もっとうまく着陸しろよ!!!」
「出来るか!!
トビウオだぞ!!」
派手な登場をしたのは麦わらのルフィだった
うわ、新聞で見た顔だ
タヌキはなんだか有名人にあったような気分になった
「麦わら屋…?」
「あっ、ケイミー!!」
ローの言葉は麦わらの大声によってかき消され、噂に違えぬ実力で瞬く間に場の視線は彼に集まった
ステージいる人魚と知り合いなのか向かっていく麦わらを仲間らしき人が止めたが、その手は6本あった
「魚人よ〜!!!
気持ち悪い〜〜!!!」
そしてその時
パンッパンッ
2発の銃声が会場に鳴り響いた
その場にいた全員が息を飲むのがわかった気がした
1拍…
人魚を買い魚人を銃で撃ったその人間は、血を流して倒れる魚人を前に喜び歌い踊り
周りの人間は化け物が死んだと喜んだ
悲しい
人間は悲しい
寂しい
醜く
卑しい
一瞬横にいるタヌキの表情が見たこともないほど冷たいものだったのをローだけが気づいた
「…タヌキ大丈夫か…?」
『…ん』
そのまま俯いてしまったタヌキの顔を完全に見る事は叶わなかった
大丈夫
私は彼女じゃない
もう“羽衣狐”は死んだんだ
人間の負の感情に触れるとどうしても自分の中の彼女が疼く
そんなタヌキにローは黙ってタヌキの手を握った
「やめろ、ムギ!!
おめェもただじゃ済まねえぞ!!」
仲間の制止も聞かず麦わらは殴った
なんの躊躇もなく踊り狂った人間を
人間は醜い
でも、私は羨ましい
私も人間に戻りたい
ずっとそう思ってた
醜く
滑稽で
それでも抗う人間に
私も人間に戻りたい
今もそう思う
うちを蠢く感情をどう呼べばいいかタヌキは自分でも分からなかったが麦わらから目を離すことはなかった
それほど、タヌキにとって麦わらとの出会いは衝撃だった
もう大丈夫だと言うようにタヌキは強くローの手を握り返した