羽衣さん、乗船する
チェンジ
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「うぉおおおお!宴だぁあああ」
タヌキの歓迎会を兼ねてと言う割に、主役そっちのけで酒を浴びるほど飲むクルーたち
ピチからのお礼には島特産の酒もあった
流石、島一の金持ちは酒も一級品だ
ベポを携えながらローも静かだが大量の酒を浴びている
…医者の不摂生とはこのことだ
タヌキも与えられた酒を煽った
「なんだ、お前もいける口か」
『まぁ、嗜む程度には』
昼間より緩い口元がローがだいぶ酔っていることを教えてくれる
タヌキは酒はあまり好きではないが付き合いで日本酒は呑んできた
妖怪も海賊も酒と宴と祭りが好きなことに変わりはないらしい
日本酒も焼酎も好きになれなかったが、今飲んでいるような甘めの桃の酒ならと、タヌキも以外と楽しく飲んでいた
妖術を使えば、逃げようと思え逃げれるのにタヌキそうしなかった
ひとつは、この世界を知らなすぎるから
一寸先は闇という言葉があるように、この世界の当たり前に殺されることだってあるのだから
ローの能力を見てタヌキはそう思った
とりあえず身をここに置くことにしたのだ
そしてもうひとつ…酒だ宴だと騒ぐ人たち
普通もっと警戒しない?
この中で今私のこと警戒しているのはペンギン帽子を被った彼…ペンギンくらいと何人かのクルー
でも、これも人見知りレベルのものでしばらくすれば落ち着くだろう
誰だって急にこんなやつが仲間だって来たら戸惑うか…
「そういやお前の名前はなんだ?」
「えっ!船長、名前も知らずにこいつ乗せたんっすか!?」
「アイアイ!タヌキって言うんだよね!」
タヌキのかわりにベポが答えた
『うん、貴方は?』
「えっ!お前も名前も知らずに乗ったのかよ!?」
「トラファルガー・ロー…」
それを皮切りに俺も俺もと自己紹介タイムが始まった
とらさんにしゃちさん…くまさん以外は可愛くないらしい…
どんどん名乗りをあげるクルーにそんな一気に覚えられないよとタヌキは心の中で謝った
その様子に気づいたローが楽しげにタヌキに酒を差し出した
「長い航路だ、次第に慣れていけばいい」
ローの言葉にふと疑問がよぎる
『そういえば、この船はどこを目指しているの?』
「この海の果て…“ラフテル”」
『ラフテル…』
「ひとつなぎの財宝を手にして俺は海賊王になる」
『海賊王…』
タヌキの知らない単語ばかりだ
ローの表情から、それは容易ではないことが見受けられる
タヌキは気づいてないが、ローとタヌキにクルーの目が集まる
ローの目を見て、なんだかそれだけじゃなさそうなと永年生きてきた羽衣狐の勘がそう伝える
『この海の果て…なるほど、考えたこともなかった…素敵ね』
タヌキの言葉にローや2人を見守っていたクルーに驚く
大抵の者は馬鹿にするように笑わう
こんな風に納得したように答えるものはいなかった
狭い狭い京の町で生きてきたタヌキには、それは新鮮に聞こえた
前の世界で狭い屋敷にいた自分が、知らない世界で世界の全てをみる
『この船に乗っていれば、世界の果てが見れるってわけだ…海賊王』
もらった酒を煽る
また難解でめんどくさい船に乗ったものだ
胸の高鳴りを抑えきれない
「当たり前だ」
満足げに笑うローにさらに賑わう船内
やっぱりこの世界は魅力的だと思った