羽衣さん、夏島【残暑】
チェンジ
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「イッカク」
真夜中、不寝番のイッカクにラッコがひっそりと近づいた
「…これ、頼まれたやつ」
ラッコの手にある映像電伝虫にイッカクが息を飲む
クマノミのところへと挑むあの時、船番だったラッコにイッカクがこっそりと渡したのだ
あの時のベポと戯れるタヌキやお子様ランチを頬張るタヌキなどの姿が収められている
「ありがとうッ!!」
奪うように受け取るイッカクにラッコはため息を吐いた
この船で船長に隠し事をすることは禁じられている
しかし、毎日食堂で話す彼女の口は軽やかで、彼女も他のクルーにも負けないくらいハートの海賊団が大好きなのをラッコは知っている
やっとこの前2人で買い物まで行けるようになった
そんな話を聞いてラッコはイッカクの背中を押したくなった
だからっていう今回は少しやりすぎたか…
もう共犯となってしまった…また取り引きを持ちかけられたら断れるだろうか
バレた時のことが頭によぎり背筋が震えた
これは己の船長やペンギン帽のあいつにバレてはいけない
絶対に…ッ!!
「ねえ!あの話して!!」
「…またかよ」
「何度でも」
「はいはい…」
また長くなるとため息を吐いた
主治医の意向により食事を重要視しているため、ラッコに不寝番はないが、たびたび彼は彼女に付き合っている
イッカクのあの話とは、ローとタヌキの馴れ初め…つまり黄泉の国の話だ
ラッコの反応を見てわかるように、幾度となく彼は彼女に話している
それでも彼女は強請るのは彼しかこの話をちゃんとしてくれないからだ
本人たちはもちろん聞けないし、シャチやベポは話が繋がっていかない…ペンギンなんてなにがあったのか機嫌が悪くなる
いつか本人の口から聞くのを夢見てイッカクは映像電伝虫を握りしめた
「あとでクマノミがメンテナンス、見てくれるんだと
これ話し終わったらちゃんと行けよ」
「……わかった」
「…お前の身体も元に戻るといいな」
「誰に物言ってんのよ…船長が任せろって言ったんだからできるに決まってるでしょ」
「そうだな…とびきりうまい飯用意して待ってるよ」
いつかきっと…彼女にもタヌキと同じように、その隣で美味しそうに自分の飯を頬張ってほしい