羽衣さん、夏島【残暑】
チェンジ
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船の完成を待つ間もローは医療機器も発注をかけているようで忙しそうだ
海軍から奪った金でだいぶ予算に余裕がでた
こだわったことには金に糸目をつけないローは医療機器や薬品、本…そしてタヌキの身の回り品にはペンギンの予想通り案の定とてつもない予算が振り分けられた
その分を差し引いてもクルーたち希望もある程度通ったことに、肩を組んで喜んだ
特にキッチンに関してはなんでもクマノミの母親が元コックらしく要求分以上に仕上がりラッコは嬉しそうだ
クルーたちも造船を手伝ったり荷造りで、やっと落ち着いてきた頃に遅れながら起工式という名の宴となった
盛り上がる宴の中、ご機嫌なドーリィがタヌキに尋ねた
「タヌキちゃんっていい人いる?」
「あァ?」
ピシリと固まるハートの海賊団
それは禁断の質問だった
ドーリィはクマノミのご飯を取り上げ、タヌキにハイと渡した
ドーリィの行動に、タヌキは困ったように渡された器をみた
どう見ても食べかけ
急なおかしな行動にハートの海賊団にはてなマークが浮かぶ
すぐクマノミによって器は彼の元に戻されかき込む
「ごちそうさん」
「だってクマさん、全然モテないんだもん」
「うるせー」
少し悲しそうな顔をしたドーリィがクマノミの隣に座りなおした
「なんだったんだ、今の?」
「この島の古い習わしだ
男性が半分食べた器を女性に渡す
女性がその残りを食べたら婚姻が成立するんだ」
「求婚のようなものか」
「あぁ、まだ出会った頃はいつまでもふらふらしてるクマにドーリィがチャンスがあれば誰彼構わずやっていたんだよ
すまないね、悪気があったわけじゃないんだ」
『いっ、いや!気にしないで』
受け取らなくてよかったー
なんてタヌキが安心してるのも束の間
「ほらよ」
そんな微妙な空気の中、ローが自分のご飯の器をタヌキに差し出した
もちろん、お代わりとかじゃなく食べかけの器を
ピシリとタヌキが固まる
今、このタイミングで!?
「どうした、食えよ」
『うう…ッ』
痛いくらいにみんなの視線が集まっているのを感じる
クルーたちの期待する暖かい目
なんで急にこんな展開に…こっ、断れない
『い、いただきます!』
こうなったらヤケだ
腹をくくったタヌキはローが差し出した器を受け取り、食べかけをもぐもぐ食べてみせた
おおーッ!と周囲から声が上がる
「船長も無理強いは感心しないなぁ…」
「タヌキ、断ってもよかったんだぜ?」
「こんな空気の中タヌキが断れると思うか?」
「……素敵ね」
「おいおいイッカク、見ろよキャプテンのあのやってやったぜと言わんばかりの顔
どこが素敵なんだよ」
口では強引だと言いつつ嬉しそうなクルーたち
ローは満足そうな様子で酒を飲む
「これで名実ともに夫婦だな、タヌキちゃんと船長!!」
クマノミの言葉に思わず咳き込む
「これでもう逃げられなくなったな、タヌキ?」
ローの腕が肩に回り、久々にローを怖く感じた
もうだいぶ前から逃げられると思ってなかったけど!
そんなタヌキを隈のついた目が捉えて離さなかった