幸せ
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家から出るとそこは
『うぇっ!?』
路地裏でした…?
迷子った?
家から出て一歩目で?
キョロキョロと周りを見渡す
うん、間違いなく路地裏だ
「よぉ、嬢ちゃん一人かい?」
「こんなところでなにしてんのー」
状況を把握できないまま、なんかガラの悪い兄ちゃんたちに絡まれた
ベタすぎる、ベタすぎる展開だなー、おい
そして、ベタすぎるが私はこれを切り抜ける事ができない
なぜなら、前は不良後ろは壁というこれまたベタすぎる展開だからだよ!
『あっうっ…』
不良を見上げるが言葉は全くでてきませんよー
っていうかなに言えばいいんですかこういう時って
怒らせたら終わりだし…
「ははっ、怖がってんのー」
「お前が怖いからだろ」
「マジかよ、そりゃ、たいへんだな
ほらほら、全然怖くないよぉ」
「そうそう
だから、一緒に遊ぼうぜ」
うっうぜー
そんなにイケてないぞ、君ら!!
って言いたい!
けどそんなこといったらどうなってしまうかっ
いわなくてもどーなるかなんて考えたくもないけどね
近づいてくる手に思わず目をつぶった
ガンっと鈍い音がした
「悲しい…悲しい話をしよう」
独特な口調となんともいい声が聞こえてきた
とりあえずめっちゃいい声だ!
「雲ひとつない、それだけで俺の心は晴れやかだった!
心踊らせながら散歩はサイッコーに楽しい
なのにっ!なのに、俺は何かいけないことをしたか?したなら、謝ろう
あっ、でも誰に謝ればいい?神か、俺か、お前らか?
いやだぁあああ、俺は誰かに頭をさげるなんてできない!
ノーだ、ムリだ、不可能だ、これは天地がひっくり返ってもできないことなんだよ
いや、まて、それでラッドの兄貴が喜ぶなら俺はいくらでもやろう!
なんてたってラッドの兄貴はスゲーからなっ!!」
「おい!!結局、手前はなにが言いてーんだよ!」
不良のお兄さんは長い話に耐えきれなくなって言葉をはさんだ
えぇ、とめちゃうの?
よかったじゃん、今の
私けっこう好きだよ
原作やアニメで憧れてきたのが生で見れるし、いい声だし
話の展開も新鮮でいいよ、いい声だし
私はがっかりしたが、お兄さんたちはイライラしてる
「俺の目の前で、男が2人がかりでキュートなお嬢さんを脅している!
弱いものいじめはよくない!よくないよくないよくない、実によくない!!」
「なんだ兄ちゃん、やろってんのガハッ」
「よくなさすぎて、オレは悲しい!
悲しすぎて、手が震えてくる!」
どうやら震えすぎたせいで手元が狂い、持っていたレンチで相手の頭を殴ってしまったらしい
いいぞ、震えてしまえ!
「手前!なにしガハッ」
「なんで話を聞かなーい、聞いてくれなーい
俺がこんなにも悲しんでいるというのに、なんてことだぁああ」
悲しみのあまり震えた手は意識のない二人をさらにボコボコにする
いいぞ、もっとやってまえ
「ぁあ、実に悲しい話だ…なぁアンタもそう思うだろ?」
悲しみに満ちた瞳が私をとらえた
『いや……私にとったらとてもうれしい話ですけど』
遠慮がちに言った私の言葉に、目を丸くして驚いている
『だって、困っていたところを助けて頂きましたし
楽しい話を聞かせて頂きました』
うん、面白かった
むしろもっと聞きたいね
今までも、好きだったけどね
実際に見て聞いたら見事ハマってしまった
「!そうか、うれしい…うれしいのか!!
喜びと悲しみは紙一重だというし
悲しみは喜びを連れてくるらしい!
ということは、このとてつもない悲しみの後にはそれ相当の喜びがくる!
楽しみだ!楽しみ過ぎでなんか壊したくなってきた」
さっきの悲しみはどこえやら、喜びを我慢できずくるくると回りだした
その心底楽しそうな姿に、おもわず笑ってしまった
ピタリとその動きが止まった
やばっ、笑ってしまったのに怒った?
「送っていこう」
私はどうやらいい声に弱いらしい
考えるよりも前にうなずいてたよ
おそるべし、ええ声…
とりあえず、大通りまで送ってもらおう、そうしよう
送ってもらうときも、話は止まらないかった
楽しいから、大歓迎だけどね!!
『ほんとありがとうございました』
「いや……あ゛ぁ~、なんか悪かったな」
『?何がですか?』
「話が長いといつも言われる
どーにもなおせんが
初対面のやつには、絶対やるなといわれる
どーにもなおせんが」
『別に私は気にしませんけど
さっきも言いましたけど、楽しいですしね』
どうやら反省してるらしい
ちゃんと人を気にかけれるから、慕われるんだろうな
そう思ったら、思わず笑ってしまって、誤魔化すようににこりと笑いかけた
そしたら、めっちゃうれしそうにしてた
「そうか!!それはよかった!
ん?そういえば、俺はお前の名前を聞いていない!
困った、これは困りすぎた」
『タヌキです』
「タヌキ!タヌキタヌキ…いい名前だ、すばらしい!」
『そこまで褒めなくても…』
「タヌキになら、いつでもどこでも力をかそう!
タヌキのおかげで、俺は死なずに済み今ここで生きていられるのだからッ!!」
腕を大きく左右に広げ、これまた大きく声をだし、行ってしまった
あなたの名前は言っていかないんですね
『……まっ、いいっか…ん?』
足元に何か落ちてた
小さいモンキーレンチだ
小さいといっても、さっきほど子供の腕ほどあるレンチを見ていたので実際は普通のサイズだけど
それを拾う
ニヨニヨするのをやめられない
一見何の変哲もないレンチだが、私にとったらもう家宝にしてもいい
『……次会った時、返せばいいっか』
そう、だからこれは別に窃盗とかそんなんじゃないよ
思ってたよりグラハムさん、かっこよかったな