幸せ
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車掌室は見るも無残な状況だった
血は天井まで飛び散り、死体と表現してもいいのか迷うほどのモノが転がっていた
『ヴッ』
一瞬みただけで気分が悪くなった
通路のすくそばにあった窓から顔を出す
吐くことはしなかったが、頭がグワングワンする
あんな中、テンションがハイになる兄貴…ある意味すげぇよ
でも、なんでかな…人としては尊敬できない
ルーアさんも心なしかひいてる気がするよ…
『ハァ……ングっ!?』
ため息をついて少しでも楽になろうとしたら、目の前が真っ赤になった
全身に風にあたり、かろうじて外にいることが解る
あとわかるのは…脳を直接刺激する、鉄の匂いだった
「目、覚めたか?おはよう」
『…ん、おはょぅござぃま…す?』
強烈な鉄の匂いに意識を飛ばしてしまったらしい
かけられた言葉につい返事をしてしまった
見渡すと荷物が多くあった…貨物室?
相手は暗闇の方にいて姿を捕らえることができない
しかし、相手はツカツカとこちらによってきたことにより姿を確認できた
「そんなに怯えるな
何もしない」
柔らかい口調で言ったその男は真っ赤だった
真っ赤
それが相手に対する第一印象
いや、列車に乗る時と先程見ているのだから第三印象なのかな
現実から逃げるために、そんなことしか考えられない
でも全く効果なし
手足震えるし、喉乾くし、目もパサパサ
怯えるな、なんて無理なこと言わんでよ
「クレア・スタンフィールド、それが俺の名だ」
『ク…レア、さんですか…
私は…タヌキです、タヌキ・モコモコ』
「ぁあ、知ってる」
さいですか…
まぁ、車掌さんですもんね
私の勇気120%を振り絞ってだした震える声は一刀両断された
「おまえのことはラックたちから聞いてるから」
『…ラックさん?』
「頼まれたんだ、おまえのことを」
えぇぇぇええぇ!!
心配するのはわかりますが、誰に頼んでるんですか!?
もっと良い人いなかったんですか!?
確かに味方にすればこれ以上頼もしい人はいないでしょうけど、前もっていってくれないと…
「俺には呼んでくれないのか?」
『はい?』
なんのことですか?
「遠慮するな、照れるのはわかるが」
いやだからなんのことですか…
「おにいちゃん、いやクレアおにいちゃんのほうがいいか?」
『…………はっ?』
なにをおっしゃいますか、クレアさん
クレアさんになにを吹き込んだんですか、ラックさん!?
私の知らないところでなにが起こった!?
天変地異でもおこった!?
じゃないと、この展開はないわっ
さっきの緊張返せ!!
全身ワイレッドの葡萄酒色のクレアさんはけろりとしている
いや、突っ込むトコロおおすぎるからね
『……なんでおにいちゃん…なんですかね?』
恐る恐る聞いてみた
緊張感が消えても、私の中の恐怖心が完全に消え去ったわけじゃないからねッ
「だって、”妹”なんだろ?
妹が”兄”のことをおにいちゃんっていってなにが悪い」
”妹”
確かにガンドール兄弟のみなさんは、私のことを本当に気づかってくれる
それこそ、自分たちを兄だと思ってくれてかまわないというほどに
現に彼らは妹のようだと言ってくれる
そう、”ようだ”といってくれる
でも、クレアさんはなにを勘違いしたのか本当の妹だと思っているらしい
『いや、私はラックさんたちの本当の妹ではなく…』
「そんなことは知っているにきまってるだろ
何年、アイツらといると思ってるんだ」
じゃあ、なんでそんなコタエにたどりつくんですか!?
なんて言えないチキンな私…
もう…ラックさんのせいだ
うぅ、ラックさん助けて…
どうしよ…どうやって断ればいいんだ…
クレアさんは
呼ぶよな?っていうか早く呼べよ
みたいな目してるもん
いやぁ、究極の選択…
葡萄酒をおにいちゃんなんて呼ぶなんてっ
ファンとしては嬉しいよ
うん、嬉しい
でも現実を見ろ
そんなことしてみろ!死亡フラグ、ビンビンじゃないか
情報屋とか情報屋とか情報屋とか…
あの人達に知られたらもう…
「で、呼ぶのか?呼ばないのか?」
『∑!?』
呼びます呼びます呼びます呼びます呼びます呼びます呼びます呼びますぅううぅぅ
これは二択じゃない!一択だ!!
なに考えてたんだろ、私ッ
最初から選択肢なんてなかったじゃないか!
『おっおぉお、』
いえねぇえええ
いやいやいや、何この緊張感
ラックさんさんの時も一方的だったけど、もっとフランクでカジュアルだったもん
雰囲気とかが…
って、そんなこと考えてる場合じゃないぞ
クレアさんは待っておられるぞっ
『ク…レア、おにぃちゃっ』
うわぁあぁぁあん
もういっそ死にたいっ
いやまって!!やっぱ死にたくないっ
目の前に”路線の影をなぞる者”がいるのにそんなこといってたらマジで殺られる
一瞬の恥だ、これは一瞬の…
「これからよろしくな、タヌキ」
ニコリとナデナデと頭を撫でるクレアさん(せめてもの抵抗で、心の中ではさん付け)
…………
……………………
…………………………………
………………………………………………イイかもしんない!
だって、クレアさんイケメンなんだもん
しょうがないじゃないか、イケメンは大抵のことは何でも許されるんだから
はぁ、このことはラックさんに言って何とかしてもらおう…
私だけで解決するのは無理だ
うん、無理無理
「ん?その血はなんなんだ?」
腕を捕まれた
その血とは、ラッドの兄貴に腕を掴まれた時についたものだ
自分の血でもなければ、返り血ってわけでもない
「ん~、タヌキに怪我させたらラックに怒られるしな…」
『?』
なにか考えているクレアさん
力を入れずに腕は掴まれている
力を入れてないからって、引き千切られない保証はないけど
今のクレアさんの様子をみると問題ないだろう
抵抗するなんて、危ないことはできない
「タヌキにちょっとここで眠ってもらうか」
『?、∑!?』
そして、首の痛みを感じるとともに私の意識はとぶ
なにが起きたんだし…
急展開すぎない?
クレアさん、自由すぎるよ…
状況はシリアス、会話はギャグ=カオス