月が欲しいと泣いている
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聞き覚えのある声に振り向けば予想通りの人物
「あっ、イヅルやん」
『…イヅル?』
「おん、ボクの副官のこ…あっ、元副官やったわ」
「………っ」
「イヅルぅ、こっちがボクのたぬきって、イヅルどないしたん?」
吉良イヅル…3番隊副隊長であり、市丸ギンの元部下…
思わぬ人物の登場に、平子サンは思わず呼びだしたワタシをみてくるが知らんぷりした
「そりゃ、感動の再会っス!
言葉につまりますよ
ねっ、吉良サン!」
「……っ言いたいことは山ほどあるわ!こんのクソ隊長!!」
「「「『………』」」」
「はぁ…はぁ…」
『…は、激しい子なんだね』
「…たまにはアンタやるわね」
「………ッッッ!!」
「おい、他に言うことあるやろ!
全く再会の反応がド下手やのぅ」
彼の反論はその一言で終わってしまった
そのやりとりをする彼を、自分でも思ったより強く冷たくとらえる
今日彼と接触するのは正直危険だった
愛染に心酔した彼女と距離が近すぎる
しかしそれでも、市丸ギンを吉良イヅルに会わせてあげたいと言ったのはたぬきだった
“彼…ギンの副隊長なんでしょ?”
たぬきの中の“たいちょー”がそうであるように、副隊長という存在も特別なものだということは知ってる
隊長と副隊長という関係を、101年前のあの事件でたぬきなりに感じていたようだった
吉良イヅルに会わせてあげたいと願うたぬき
それを大きなお世話だとは思わないが…
「貴女が…たぬきさん」
『あっ、はい…ギンがお世話になったようでありがとうございました!』
そういうことを関係なしに、僕は彼女の願いならなんだって叶えてあげたいと思った
どうなろうと
彼がどう思おうと
僕の心は動かない
叶えるのは彼女の望みだけ
「い、いえこちらこそっ隊長が…お世話に…」
「イヅル…元、隊長や」
市丸さんもどうやらワタシと同じ考えだったようで、もう一線を超える気もないようだ
ビリリリリッ!
終わりの鐘がなる
「すみません、時間切れっす
わかってるとは思いますが、このことはご内密に」
「わかっとるわ
俺らを甘くみんなよ」
「…そうっすか
そいつは失敬…」
制するように平子サンが強く答える
帽子を深く被り口元を扇子で隠せば、もうこちらの考えは読めないだろう
たぬきはともかく、市丸さんの肩身は狭いのは事実だ
『ありがとう…喜助』
それからワガママ言ってごめんなさい
いつの間にかワタシの腰あたりに来ていたたぬき
「お安いご用っすよん」
貴女の我が儘に
ワタシはいつだって全力で
答えてあげたい
僕は優しくなんかない
ワタシは僕の味方で
たぬきの敵は僕の敵だ
出会った頃から変わらない
だから
「我が儘たくさんいってください」
貴女の為なら僕は何にだってなれる
それが僕の幸せなのだから