月が欲しいと泣いている
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死ぬんや
腹部からくる痛みが教えてくれる
眼に映るあの人の余裕そうな顔に悔しさが滲み出る
結局ボクは何も果たせず死ぬんやと
手も足も動かなくなって
目も霞み、乱菊が見えんようになっていく
ぁあ…あの時の彼女もこんな感じだったのだろうか
たぬき…ごめん…
もっとボクに力があれば、今も君の隣に立てただろうか
また生まれ変わって逢えたなら次こそは…君を
「…たぬき」
気がつくと見覚えのない天井がみえた
窓から鳥のさえずる声がする
……ここは?
「おやぁ、起きました?」
「あんたは…」
突然発せられた声のほう帽子のを向くと、そこには101年前からかわらない飄々とした帽子の男が立っていた
「傷塞がりきってないんで、あんまり動いちゃ死んじゃいますよ」
「ボク、死んだんとちゃんや」
「えぇ、残念ながらしぶとく生きてますねぇ」
「…そぉですか」
「まっ、聞きたいことは山ほどあると思いますがとりあえずはワタシが幾つかまとめて説明しましょう」
101年前からそう、この男は苦手だ
飄々としてつかみどころがない、本心をみせない
今も自分が言おうとしたところにわざとセリフ被せてきよったし
全く嫌な男や
……まぁ、自分も似たようなもんやけど
ボスンッと布団の前に座って話はじめた
…埃まうからやめてほしんやけど…僕重症患者
ほんま、このニヤニヤした顔見てるとムカつくわぁ
「まず一つ、あなたは死んじゃいません。傷も一ヶ月もすれば普通に歩けるようになります…が、ご自身で気づいてる通り霊力はほとんど消失しています。こちらに関しては回復の見込みははっきり言って絶望的…よくて以前の10分の1…いやそれ以下でしょう」
「………」
もう相方が…聞こえん見えん匂わへん感じぃひん…
永きに渡って共にいた自分の体の一部を剥ぎ取られた感覚に、いつも彼がいた場所に手をやるが虚しく空を切る右手が寂しい
そんことを知ってから知らずか
いや、この男なら知っていてわざと話を続けていく
「二つ、東仙要は今回戦いで死亡。愛染惣右介は捉えられ、地下最下層の独房懲役2万年の実刑です。あなたの守りたがってた松本乱菊はご健在です。」
「…そぉですか」
「市丸ギンについては尸魂界(あちら)では死亡したことになっています。流魂街にお墓もできるらしいッスよん」
「お墓か…なんやヘンなカンジです」
「………」
さっきまで饒舌に喋っていた浦原の口がとまる
口元を扇子で覆い、もとより深くかぶっている帽子により顔はほぼ見えない
「いややわ浦原隊長……まだ話の途中ですよ?どないしたんですか?」
「…………」
わざと呼んだ名称にも口を閉ざす浦原に、自分の唇が乾いていくのを感じる
「………」
「…たぬき」
「………」
「たぬき、たぬきはどこにおるん?」
「………」
「口閉じてたらわかりませんやん
なぁ、ちゃんと言ってくれな…ボクわからんよってからに」
「…たぬきさんの斬魄刀の能力はご存知でしょう。そしてそのリバウンドの大きさも…」
「………」
今度はボクが口を閉ざす番やった
もう一音だって漏れ出てはくれない
無を有にする力
なんでもできてなんにもできない…
大きすぎる力は身を滅ぼし心を燃やし、魂を堕としていく
「あなたは死ぬはずだった…たぬきさんはそれを助けッ……市丸さん、手はなしてもらえませんか…まだ話の途中ですよ?」
「そんなオモロない冗談、聞きたないですわ…そんな冗談…冗談でも言ってほしない…たぬきがたぬきがまたボクん前から消えるなんてっ」
「三つ!!力を使いすぎたたぬきさんは!…たぬきは…っ」
また口を紡がなくなった
絶望を感じる
この感覚はいつぶりだろうか
そうだ、これは101年前…
同じや
真っ黒なものに全てが支配される
そんなせっかく生きてたってわかったのに
そんな…誰か嘘って言うてくれや
たぬき、笑いながらまたボクを呼んで
たぬきの霊圧を感じひん…そういやボクもう力ないんやったっけ?
ぁあたぬき…もう探すことすら許してくれんの?
ボクが悪いこぉやから?
いい子にするから
好き嫌いもしぃひんし
仕事も真面目にする
イヅルには少ししか迷惑かけへぇんから…
頼むからまたボクの名前を呼んで
“ギン!”
…たぬきッ