月が欲しいと泣いている
change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『破道の三十三 蒼火墜ッ』
詠唱を唱えるもポスッという音を立てて不発に終わる
ととさまに似て鬼道はあまり得意ではなかった
授業ではとても追いつけないと終わった後1人で残る日々が続いていた
「もう授業終わっとるのにたぬきは勉強熱心やね」
『いつからいたの?声かけてくれればよかったのに』
「たぬきが一所懸命やってるから邪魔したあかんかなーって」
いつからいたのか
ずっと出来ないところを見られていたと思うと恥ずかしさで少し頬が赤く染まる
「帰らへんの?」
『もう少しやってから帰る
ギンは先帰ってていいよ』
とにかくこの鬼道だけは今日中になんとかしたい
「そんなに力入ってたら出来るもんも出来ひんようになるよー
さっきから全然休んでへんやんか
ほら、ちょっとは休憩しぃ」
いったいいつから見ていたのか
ぽんぽんと自分の隣を叩くギン
『でもっング』
さっきまで入り口の方にいたギンがいつの間にか目の前にいて急に口の中に何か入れられる
「口答えせんと早う座りぃや」
口に入れられたのは干し柿だった
…なんで干し柿?
でも…
『おいしい』
「やろ?息抜きも大切やで」
『ギンは息抜きすぎー
抜きすぎてそのうちペラペラになっちゃうよ』
「なんやのそれー」
『だから私が入れてあげるね』
「なら、たぬきが息詰まりすぎてパンパンに破裂せんよーに僕が抜いたげるわ」
『お願いします!』
2人でくだらない冗談で笑いあって
結局ギンのペースで休むことになって
ギンの横に座りいっしょに干し柿を食べる
『ギン、干し柿好きなの?』
「おん!」
『そうなんだ』
またひとつギンのことが知れたことが
それだけのことなのにたまらなく嬉しかった
干し柿を食べ終えたギンはヒョイと立ち上がると
「ほな、市丸先生が教えてあげましょ!」
どこからくるのか自信に満ち溢れた姿で先生の真似事をするギン
しかし、なるほど
先生に教わるよりはるかにわかりやすい
そして、半刻後にはそれは見事的の真ん中を射るほど上達していた
『やった!!初めて成功した!ギンありがとうッ!!』
思わず抱きしめた自分にハッとして離そうとするより先に
背中に回ったギンの腕があの頃よりしっかりしたものだった
あのときより胸がドキドキしたのは
きっと気のせいじゃない