月が欲しいと泣いている
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幾夜も待った時もあった
月が出てる日にたぬきがくるってわかってた
でも、僕がおらん時にたぬきがおったらって考えると堪らんくなって
一日も欠かす事なくあの場所に出掛ける日々や
またねの言葉に縛られて
今日は月が綺麗やから
彼女もきっと現れる
まるで月からやってくるかぐや姫
いつかは消えるかぐや姫…
『ギン、あのね今日ねととさまにね…』
なんの違和感もなく彼女はボクに入り込んできて、ボクの名前を呼ぶ
これをなんと呼ぶんやろか
ポカポカするこの気持ちは…
そんな、彼女の囀りがとまった
「…たぬき?
どうしたん?もっと話し聞かせてくれんの?」
『ギンは…ギンは話してくれないの?』
「えっ」
『いっつも私ばっかり…私もギンのこと知りたいのに』
ヒュッと風がボクの髪をさらって通り過ぎて
今までで一番、たぬきを遠くに感じた
ボクは…
ボクはなにをしたんやろ…
昨日は生き延びた
今日は生き通した
明日は生きられるだろうか…
ボクには話せることなんてなんもない
空っぽなんやと
「………こまったなぁ
なにもないんや」
『うそ』
「うそちゃうよ
話すことなんてなんにもない
ボクは空っぽや、なんもないんよ」
この空っぽの心をつくるのは
たぬきがボクの名前を呼ぶたびに心がつくられるんや
「だから、たぬきはここにおってほしい
ボクが1番、ボクを感じる」
『うん…』
「ありがとう」
そう言って彼女を抱きしめてた
この暖かさをずっと感じたいと思った
明日すら約束のない世界に
また明日も生きたいと願った
もう月なんて消えてしまえばええのに
そうしたら彼女は帰る場所を失って
この瞬間がずっと続くのに