月が欲しいと泣いている
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それから月が見守る夜はギンに会いにいくようになった
この頃にはもう慣れたもので
この月の下にいる時間も格段に増えた
いつ私がいくのか言っていないのに、ギンは当たり前のように湖の淵から夜空を見上げていた
もうなにも言わなくても、スッとギンの横に座って
『ギン、あのね今日ねととさまにね…』
会わなかった時のことを話す
もっとギンに知って欲しくて
でもギンはあんまり話してくれないで
もっとギンのこと知りたいのに
ギンはそう思ってくれてないのかな…
そう思うと言の葉が風に消えた
「…たぬき?
どうしたん?もっと話し聞かせてくれんの?」
『ギンは…ギンは話してくれないの?』
「えっ」
『いっつも私ばっかり…私もギンのこと知りたいのに』
「………こまったなぁ
なにもないんや
たぬきに話すことが」
『うそ』
「うそちゃうよ
話すことなんてなんにもない
ボクは空っぽや、なんもないんよ」
頬を撫でる風が冷たく
今まで1番、ギンが遠くにかんじた
「だから、たぬきはここにおってほしい
ボクが1番、ボクを感じれる」
『うん…』
「ありがとう」
はじめてギンに抱きしめられた
喜助さんの時とは違うところが
ポカポカじゃなくて、ぎゅーとなって
それがたまらなくて
ちょっぴり苦しいけど
行き場のわからない両の手をそっとギンの背中に回して
ねぇ、お月様
今宵だけいつもより永く見守って
この瞬間が、少しでも続くように