帽子
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寝て起きると、いつものツナギの服とともに見覚えのない何とも言えない帽子が置いてあった
なんか前にもあったような…
違うのは、寝ている部屋がベポの測量室からタヌキの自室といってもいい船長室になったことくらい
船長室に潜り込むなんてどこの勇者だ
昨日も遅くまで本を読んでいたのだろうか、隣で寝ているローを起こさないよう、タヌキは帽子を手に取りみんながいるであろう食堂に向かう
これはローが起きる前に解決しなくては
『…これなに』
「おはようタヌキって…ぼうし?
どうしたの、タヌキ
いつのまに、ぼうし?」
タヌキの言葉に1番近くにいたベポが答えた
急なタヌキの言葉と帽子に、その大半が呆気にとられているとベポの隣にいたペンギンが声をあげた
「なんで被って来ねえんだよ!!」
「またペンギンかよ!」
「お前、この手のことに無駄な才能を発揮するよな」
ツナギの件はあっという間に船内に広まり、そのデザイン性の高さにもはや尊敬の眼差しをむける者すらいた
「ずっとなんか足りないと思ってたんだ
ハートの海賊団で船長の隣にいるのに、被ってないなんておかしいだろ!!」
『いや、別におかしくはないけど…この帽子、形おかしくない?』
「フッフッフッ…」
『なにその気持ち悪い笑い方…やめてよ』
「気づいたかタヌキ!
前のツナギのときはお前のことをよく理解していなかったが、今は違う!!!
この帽子には!タヌキの獣耳をしまえるように耳ポケットが付いているんだ!」
「わっ…匠の余計なこだわり」
勢いそのままにペンギンはタヌキの手から帽子を奪い頭にかぶせる
似合う似合うなんて陽気な声が飛んでくる
獣耳なんて尻尾と違って数回しか出したことないけど…
利便性がないと日常生活では全く出さないことをペンギンも知っているはずなのに、なんだその期待した目は…
タヌキの尻尾が不機嫌そうに横にゆらゆら揺れる
「なんか俺ペンギンが怖くなったきた」
「俺はキャプテンがここにいなくてよかったって心底思うよ」
「柄は船長のリクエストでトラ柄にしといた!」
「!!、ちょっとまって!」
『えっこれ、ローも一枚噛んでるの?』
「当たり前だろ?なんだったら、ツナギの時から船長の意見は取り入れてる」
『衝撃』
さも当たり前のように言われ、場は騒然とした
じゃあ今もすやすやと眠っているのは、昨日の夜遅くまでペンギンとコレについて話していたのか!
よく見ればペンギンの目の下にも僅かながらクマがあるような
「…そういえば、タヌキのツナギのデザイン…どことなくナースっぽくないか?」
「あのさり気なさ…本気を感じるぜ」
「じゃ、タヌキ
これ被って船長起こして来てくれ」
起こしにいくと、ローがタヌキが被っている帽子のを見て満足げに笑った