午前零時のロマンチカ
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早朝。車を降りた者から誘導された位置に立ち、自分たちを写す数多のレンズを相手にする。
「ユア」
「ん?」
「ん」
「ん!」
フォトタイムを終えた"出国"の道すがら、差し出しだされた左手に素直に自分のものを絡ませたユアは嬉しそうにジニョンの顔を覗く。細められたその目にジニョンもふわりと微笑み返す。大きくなった悲鳴と共にシャッターを切る音が響く。
「によによ〜〜」
ジニョンがユアといると必ず誰かが寄ってくる。ユアについてくると言ってもいい。今回はユギョムだ。自分と話をしていたユアがジニョンと手を繋ぎ歩き出したのが気に入らないのだろう。ジニョンの浮かべた笑顔を効果音付きで揶揄うユギョムに、ユアが楽しそうに言う。
「ユギョマ、私に嫉妬してるんでしょ」
「…ハ?」
「ジニョンオッパと手繋ぎたいんでしょう?」
「フッ、ヒョンアとおてて繋ぎたいの?」
「なっ、」
ジニョンと繋いでいる手を振り回しながら笑うユアにユギョムはポカンと口を開ける。その顔に思わず吹き出したジニョンは我に返ったユギョムにきつく睨まれる。
「ジニョンイヒョン……」
「ん、フフッ」
「オッパも揶揄わないでよ、揶揄うからユギョミが言いにくくなるんじゃん」
「いや!言わないし!繋ぎたくないし!」
「いいじゃん、別に笑わないよ。ね、オッパ!」
「ふふっ、うん、笑わない」
「笑ってるし!!いや!繋がないけど!!」
盛大な勘違いを含んだ余計なお世話とユギョムの赤い顔にジニョンはついに右手で顔を覆い笑い出す。
「もう!笑わないで、って!」
「っふ、ははっ、ご、めっ」
「………」
「…いーよね、もう。私と繋ごう」
「え」
笑い止まないジニョンからふいと顔を背けたユアは繋いだ右手はそのままに左手でユギョムの右手をするりと掴む。
「フ、よかったな、」
「……ッるさい」
ついに真っ赤になったユギョムの顔にジニョンはまたプッと吹き出してしまい、ユアに睨まれる。
「…どう言う状況?」
「ジニョンオッパがギョミを揶揄うから私が慰めてあげてるの」
「ふぅ〜〜ん」
後ろから追いついた眠たげな表情のベンベンがユギョムの肩に手を回し尋ねる。それもそのはず、大の大人が3人並んで手を繋ぎながら歩いているのだ。映像、写真によって残されていくこの絵面はさぞ面白いことだろう。
「ベミもユギョミと手繋ぐ?」
「ン〜〜いいや、あとでユアと繋ぐ」
「あとで?」
「ン」
「今日お隣に座るんだもんね〜」
「ね〜〜」
「ハー?聞いてないんですけどォ」
「言ってないもーん」
「イヤホン二つにするやつも持ってきたもーん」
「映画二人で観るんだよねー!」
「うわずるっ」
「じゃあ次ベムのとなりに座ればいいじゃん、イヤホン貸してあげるし」
「ユギョミはユアと座りたいんだと思うよ」
「え〜?そうなの?」
「……ウン」
「ア〜……ごめん、私ロスまで予約埋まってて……」
「えぇ……?」
「人気店か」
ジニョンのツッコミにユアはケラケラと楽しそうに笑う。頭を後ろに傾け口を大きく開ける笑い方は一体誰に似たのだか。
「あ〜?!待って?!」
「うお、なんだ」
笑っていたかと思えば急にそう叫び、二人の手を振りほどいたユアは少し前を歩いていたジェボムの背中に飛びついて。また小さく上がった悲鳴とシャッターを切る音。突然のユアの行動に目を丸くしたユギョムとジニョンに口角を上げるベンベン。
「バブルティー!」
「……朝から?」
「お腹空いたんだもん……」
「乗ってから食べるんだろ?」
「今飲みたいの……」
「かわいこぶっても俺には効きませーん」
「じゃあいいもんヨンジェオッパ連れてく」
「おうおう勝手にしろ」
空港内にバブルティーの専門店が入っていることを思い出したらしいユアはジェボムを誘って飲みに行く魂胆だったらしい。願いも空しく、あっさりと断られたわけだが。今度はジニョンたちよりも後ろを歩いているヨンジェをターゲットにしたらしいユアは、その場で立ち止まり自分にはひときわ甘いその兄が歩いてくるのをじっと待つ。
「ヨンジェオーッパ!」
「わ、どしたの?」
「お腹空いた……」
「ホットサンドは?」
「あとで食べるの」
「……じゃあなにたべ……バブルティー?」
「そう!さすがオッパ!」
腕に絡みついたユアはイヤホンを手の中で玩ぶヨンジェに必殺技ともいえるおねだり用の表情を炸裂させる。
「飲みたくなあい?」
「や、俺はいいけどユアが行きたいなら……」
「ほんと?!」
「…………こわ」
「アー!そんなこと言うゆぎょむくんにはあげませんからー!」
「元々結構ですけど!?」
騒がしい声が朝の静かな空港を活気付ける。この後念願叶ってバブルティーを買いに行ったユアだったが、調子に乗って頼んだラージサイズを飲みきれず結局ジェボムが処理することになるのはまた別の話。
風が吹いたら
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