I WANNA BE WITH YOU 11
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「厄介な台詞を覚えた」
それが、ユア以外のメンバーほぼ全員の総意であった。
「ヌナ、今日は一段とかわいいね」
そう誰かが言えば
「え、本当?私と付き合う?」
これだ。
褒められたり、何かをしてもらったりした時、いつからかそういうようになったユアは、最近のメンバー達の悩みのタネだった。
ソンウンで言うところの「入金」なのだが、ユアが言うと心への負荷が違いすぎる。
しかし、言われたほとんどのメンバーが困ったりどもったり赤くなったりする中、愉しんでいる者がいるのも事実。それがまさにミニョンだ。
「お?ミニョンオッパ、私と付き合います?」
そう言われると、必ずミニョンは「おお、俺たち付き合うか」とすんなり返事をする。
ユアの肩を抱き、手を繋ぎ、膝に乗せ、餌付けをする。
やりたい放題のオンパレードだ。
ユアもそれを甘んじて受け入れているのだからタチが悪い。
それに、問題はまだある。
その台詞を未だに言われたことのない者がいるのだ。11人の中で。
既に付き合ってると思えばまあ言われないのもわからないでもないが、そんなことを言っているのではない。
純粋につまらないのだ。仲間外れにされているようで。
ソンウは思った。
言われないのなら、自分で言えば良いのではないか。
「オッパ、今日のヘアスタイルもとっても素敵ですね」
美容室を出ると毎回そう声を掛けてきてくれるユアに、ソンウはいつもお礼と謙遜で返していたが、今日は一泡吹かせてやるのだ。
「ほんと?ありがと。オッパと付き合う?」
そう言って対ユア用の最高級の笑み浮かべ、目を合わせる。ユアは目を見開いて「…え?ええ、はい」などとなんだかもごもご喋ったかと思えば、さっと何処かへ行ってしまう。
赤くなるとか、慌てるとか、もう少しいい反応を期待していたソンウだったので、あっさり答えられて肩透かしを食らったような気分だった。
「オッパ、私とソンウオッパって、付き合ってなかったんですね」
「なんて?」
「私てっきり……………ものすごく恥ずかしい…」
「いや全然話の流れが掴めないんだけど」
「………ふつう、付き合ってなくても、キス…とかってします?」
「キス」の部分を物凄く小さな声で言うのに思わず笑ってしまって、ユアから睨みを受ける。
「別にする人はすると思うけど、ソンウがそういう人間だとは」
「ア〜〜〜〜?マジで恥ずかし」
ひとの話を聞いているのかいないのか、そう叫びながら頭を抱えしゃがみこんだユアに、ここは廊下だよ、とミニョンは静かに教えてあげる。
しかもテレビ局の廊下だ。ファンと鉢合わせはないが、他の出演者やスタッフの方々は普通に通る。
変わらず頭を抱えたままのユアを立ち上がらせ、とりあえず割り当てられた楽屋に帰ることにする。
「とりあえず俺と付き合う?」
「どうしよう」
「考えてくれるの?」
「はい?」
「はーい」
収録を終え先に帰っていたメンバーたちが二人を迎える。衣装を返せば今日の仕事は終了だ。ジソンの声で荷物をまとめ始めたみんなに合わせユアも少ない荷物を持つ。
「大丈夫?」
「はい?あ、はい」
ソンウがユアを覗き込むと、ユアは慌てて顔をあげるも、すぐに目は逸らされる。
「ちょっと、話したいんだけど」
「なんですか?」
「ここじゃなくて、車ででも」
ソンウがそういうと更に目を泳がせるユア。
「あ〜車は、ミニョニオッパとゲームをする約束を…」
そういうユアにミニョンを見ると、俺を使うな、という顔をしながら「俺は別に宿舎に帰ってからでもいいよ」と突き放す。
ミニョンを信じられない目で見ながらユアは咄嗟に助けてくれるメンバーを探すが、広い楽屋ではないため、話は筒抜けだっただろう。
ソンウは、それが恥ずかしくも、ありがたくも感じた。
出るぞ、というマネージャーの声にユアの手を引き一番最初に楽屋を出て車に乗る。今日の退勤は時間がかなり遅いため地下駐車場から出るのだ。
一番前の席を確保しユアを窓側に座らせる。
先程から挙動が明らかにおかしいユアは窓に頬を預け、ソンウの方を見ることはない。
繋いだままの手が気になるのか、しっかり握ったソンウに対し、ユアの手はソワソワと落ち着かない。
「手、やだ?」
「え?!えっ、いや!じゃないです!」
目は全く合わないが、赤く染まった耳に、完全に拒絶されたわけではないのだろう、とソンウは思う。
ただ、なぜか避けられているだけで。
「それで?」
「………なにがです?」
「どうしてそんな風なの?」
「………そんな…とは?」
「オッパの顔は見たくない?」
「そんな…ことは」
「じゃあ俺の目を見て」
「それは、」
そう言ったっきり下を向いて黙り込んでしまったユアに、ソンウは優しく語りかける。
「俺の目を見て」
「………はい」
小さな返事と共にソンウを見た瞳は潤みきっていて、頬は真っ赤に上気し、今にも涙が零れ落ちそうだった。
「どうして…そんな顔してるの?」
「いや…その、ただ、恥ずかしくて」
「なんで?」
「あの、勘違いしていた、自分が恥ずかしくて、です」
今まで以上に頭にハテナマークが浮かんだソンウが首を傾げると、ユアは言葉を続ける。
「その、勝手にひとりで盛り上がって、勘違いしていたので」
恥ずかしくて。最後は消え入るように呟かれたその言葉にも、ソンウの疑問は解けない。
「何を勘違いしたの?」
「それは………言えません」
「俺にも?」
「ソンウオッパだからです」
「……彼氏の俺にも言えないことってなに?」
言い方がキツくなってしまったことにソンウは気づいていたが、どうしても止められなかった。
メンバーたちみんながいる車の中では、そんなに重い話をするつもりはなかったはずだった。
これは泣かせてしまうかもしれないな、そう思ったソンウだったが、その思いは杞憂に終わる。
「彼氏?!?!」
ユアの叫び声に、それぞれの話で盛り上がっていたバンの中は一気に静まり返る。
叫ばれたその言葉に、他のメンバーと同様ソンウも固まってしまう。
その空気に気づいたのか、ユアは後ろの席に乗り出し、言う。
「叫んでごめんなさい。どうぞお話を続けてください」
そう言われても、というのも、ユア以外のほとんどみんなが思っていたことだろう。
「ごめんなさい、彼氏?オッパが?」
「そ……うじゃなかったっけ?」
「オッパは、わたしの、彼氏ですか?」
「そうだと思ってたんだけど…」
「私はオッパの彼女?」
「え……っと、はい」
必死の形相で迫ってくるユアに今度はソンウが引く番だった。
「私とオッパが付き合っているということですよね?」
「そう…ですね」
「もしかして…私また勘違いしてました?」
「その前のやつも俺まだよくわかってないんだけど」
「もう大丈夫です!すみませんでした!」
大きな声で謝って頭を下げるユアにソンウはおぅ、と小さな声で返事をすることしかできなかった。
ソンウとしては何一つ解決されていないのだが、ユアはすでに晴れ晴れとした顔をして結局繋がったままでいた手を握りなおしている。
「私オッパのこと不誠実な人だと思ってました」
「…あの、それはまた、なぜ」
「ちゅーとかするから」
「エッ」