8話
夢小説設定
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最近のユアは件の練習室の電気を消して利用していた。外界、主に過保護な兄たちに干渉されない為である。
最近、というとコンセプト評価が始まり、NEVER組に振り分けられてからなのだが。
望んでいたメンバーと歌えることは勿論嬉しいものの、やはりそれとこれとは話が別であった。
一番のストレスは、成人者グループの部屋に割り振られてしまったこと。なぜあの可愛いグァンリンや可愛いユソノや可愛いウジニや可愛いデフィや可愛いハンニョンのいる方でなく、むさ苦しい方に割り振られたのか未だにわからない。
私がソンウンオッパと変わるよ!という申し出も笑顔で断られてしまい、虚しい結果となった。
むさ苦しいというのは勿論冗談なのだが、ソンウと気まずくなってからまともに顔も見ていないというのに、いきなり同じ部屋はレベルが高い。
とはいえセンター決めは公正にしなければならないので、あくまで公平公正に、ミニョンとソンウに投票したのだ。
イヤホンを耳に突っ込んで寝っ転がる。今日の個人練習は不真面目にすることにして、自分のパートではなく好きなパートを歌う。
「ユアにも出来ないことがあるんだね」
ドアが開けられ廊下の光がこちら側に漏れたことで一気に覚醒する。かばっと起き上がりイヤホンを外した耳に入ってきたのはここしばらくの間、聞こえていたのに聞いていなかった声だった。
「あ、はい。私ラップは出来ません」
「そっちもそうだけど、意識してないフリをするのも」
「意識は当たり前にしました」
「素直だね」
「あんな盛大な告白をされて、普通に接する方が無理です」
「告白だって知ってたの?」
にこにこ、よりもニヤニヤとこちらを覗き込んでくるソンウの視線が鬱陶しくて、床に放りっぱなしにしていたMP3の再生中のアニメーションを意味もなく見つめる。
カサカサと外れたイヤホンから微かに聞こえる音漏れに気が紛れる。ふたりきりの空間で無音じゃないのが唯一の救いだ。
「……からかわないでください」
「ごめんね」
「いえ」
「迷惑だった?」
「そういうわけじゃ」
「嫌なら嫌って言って」
「......」
「はっきり断ってくれた方が俺も助かるし」
「なんでそんなに冷たい言い方するんですか、っ」
思わず顔を膝に埋め、流れそうになった涙を隠す。涙声になってしまったことが悔やまれるが、まだ泣いてはいない。セーフだ。
「ねえ、顔見せて」
「……いやです」
「顔を見ないとユアの気持ちがわからないんだよ。最近ユアの顔をちゃんと見てないから、俺のことまだ好きでいてくれてるか自信なくしてるんだ」
ソンウのおちゃらけた言い方に膝に顔を埋めたまま、おかしくなって少し笑ってしまう。
「私まだオッパのこと好きって言ってないんですけど」
「まだ?これから言う予定あるの?」
「……」
「まあ…俺のものになっては正直言い過ぎたよ。俺はただ……ユアの1番を貰える権利が欲しいんだ。辛いときは慰めたいし、楽しいときは抱き合って喜びを分かち合いたい。どう?」
「それは今の状況と何が違うんですか」
「何も違わないよ、でもまず、ニエリのベッドに寝転がるのは禁止になるけど」
「ふふっ、そんなこと?」
「プロレスごっこも」
「楽勝ですね」
「ドライヤーをしてもらうのも禁止」
聞き捨てならない言葉に思わず顔を上げてしまう。膝の暗闇に慣れた目には廊下から漏れる光も眩しすぎる。
「ええ〜〜!」
「やっと顔上げてくれた」
「待ってください、ドライヤー禁止ってジソンオッパのドライヤーを我慢しろって話ですか?」
「ミニョンのもね」
「そんな酷いこと…」
「俺に頼めばいいだろ」
「……してくれるんですか?」
「喜んで」
そう言って笑った顔は目尻を最大限に下げたユアの好きな笑顔で。ユアに対する必殺技に該当するようなものなのだ。
突然繰り出されたその笑顔に狼狽えたユアは下唇を噛んでまた膝を抱えて蹲る。
「あれっ、どうしてー?」
「オッパが悪いです」
「うん、俺が悪かった。だから顔上げて」
「ドアを閉めてください」
「なんで?」
「眩しいので」
「真っ暗になっちゃう」
「それでいいんです」
「……いやらしいことしちゃうかも」
「したら、ジソンオッパにドライヤーしてもらった後ニエリオッパのベッドでミニョニオッパと手を繋いで寝てジョンヒョニオッパと結婚します」
「わかった。……ちゅーもだめ?」
「いっかい、なら」
ふふ、と笑われたかと思えばかちゃりとドアが閉まる音がする。
そういえば、忘れていたMP3の音漏れが聞こえてくる。