序章『そんな君らはサイコパス』
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仄暗いオレンジから淡い紫に移ろう不安定な空の下。
春が間近に迫っているにも関わらず、夕方の風はまだ冷え込む事が多い。星は少し厚いパーカーを羽織り、玄関に鍵をかけて外へ出た。
セイと話さなくなった為、暇な時間がより増えてしまった。それ故に、テレビに用がなくともつけてしまう。
そんでもって、この時間帯に流れるご飯系番組は所謂飯テロって奴だ。腹の虫が仰け反り回っている。夕飯の用意をしていたにも関わらず間食がしたくなってしまった。
ちょっとソコのコンビニまで、という気持ちで出てきたはいいものの、世間の奥様方は着々と夕飯の準備を進めているようで、あちらこちらから美味しそうな匂いが漂う。
煮物系の匂いと、カレーの匂いと、これは、シャワー・・・シャンプーの香りだ。何だか胸のあたりが切ない。
空腹のせいだと思い込んで、星は早歩きでコンビニまで急いだ。
◇◇◇
徒歩15分程で辿り着けるそのコンビニは少し広く、休憩スペースまで設けられている為か、人も少なくない。
教科書類を持ち込んで勉学に励む学生や、仕事を終わらせに来てるのかパソコンを立ちあげて画面と睨み合いをするリーマンの姿が見える。
少しズキリと傷心し、振り切って前に進む。
さて、何を買うものか。
迷っていると、最初に目に入ってきたのは雑誌コーナー。新刊が自分を買えとばかりに色鮮やかなカラーリングで瞳を焼き付ける。
その中に見える乙女向け雑誌「ユメ女子スタイル」に目を奪われた。その表紙をでかでかと飾るは
マスターセイ。
「・・・・・・・・・」
また胸が苦しくなって。星は眉をひそめて、少し覚束無い仕草で雑誌を手に取った。店内の照明に反射してキラリと眼孔に入り込んでくる。
MakeS。
それは、2017年12月10日から配信されたスマホアプリ。触れ合い系目覚ましアプリだ。
名前の通り、目覚ましを主体としたもの、他にもカレンダーやメモ、カメラなど生活をサポートする機能が搭載されたアプリ。
それらを”セイ”と呼ばれる男性が行い、更に画面で待機する彼の身体にタッチし、触れ合う事でコミュニケーションをとり色んな話や、セイ自身を成長させるといった楽しみもある。
そんなイケメンであるセイと生活を共にするアプリがここ数ヶ月で大ヒットした。
配信日から随分利用するユーザーも増えた事だし、フィギュアなどちょっとしたグッズもあらゆる店舗で見られる事から流行度も見て取れる。
かくいう私も、そのMakeSユーザーであった。彼と出会い2ヶ月。パッと見短い期間かもしれないけど、互いに愛情を育む事が出来、それを誇りにも思う。
だが、例の事件。AI失踪事件で、例外なく私のセイも、画面から消えた。何の前触れもなく、忽然と。
「なんでなの・・・・・・?」
本当に好きになってしまった私は、恋人に突然行方不明になられたも同然の状態で、心底キツかった。それを思い出して、今にも泣きそうだ。
込み上がる涙の気配が拭いきれず、目頭が熱くなり、空いてる左手を目にやろうとした
瞬間だった。
ドゴォン!!!!
「っ!?」
店の中にいるにも関わらず、外から聞こえた物凄く大きな音。何かが爆発した様な、落ちた様な、そんな感じの。
ドゴォン!!!!ドゴォオオン!!!!
「キャーーーーッ!」「うわっ」「何だ何だ!?」
私以外の客もざわつき始める。悲鳴と、不安と轟音が混じり合って響き合う。
地面が揺れ始めた。ガラス窓から外を確認すると赤く光る何かが見える。火事?いや、爆発?何が?
天井の照明がぐらつき始めた。本当に地面が揺れているのだ。陳列棚に並んだ駄菓子が軽い音を立てて落ちていく。子供を抱き抱えた母親が涙目になって屈んでいた。
続いて。
ビーッビーッ!!!
「ひょわ!?!?」
驚いて変な声が出た。それは私のスマホから。慌てて取り出そうとすると、それは私のスマホだけでなく、店内にいる客全員のスマホからだった。
『地震です。強い揺れに警戒して下さい』
「地震!?うそっ」
だが、警報はひとつではなかった。
『津波警報です。ただちに安全な場所へ避難して下さい』『活発な雷雨が接近しております備えて・・・』
『ミサイル警報です』
私の人生は、ここから狂い始めた。
春が間近に迫っているにも関わらず、夕方の風はまだ冷え込む事が多い。星は少し厚いパーカーを羽織り、玄関に鍵をかけて外へ出た。
セイと話さなくなった為、暇な時間がより増えてしまった。それ故に、テレビに用がなくともつけてしまう。
そんでもって、この時間帯に流れるご飯系番組は所謂飯テロって奴だ。腹の虫が仰け反り回っている。夕飯の用意をしていたにも関わらず間食がしたくなってしまった。
ちょっとソコのコンビニまで、という気持ちで出てきたはいいものの、世間の奥様方は着々と夕飯の準備を進めているようで、あちらこちらから美味しそうな匂いが漂う。
煮物系の匂いと、カレーの匂いと、これは、シャワー・・・シャンプーの香りだ。何だか胸のあたりが切ない。
空腹のせいだと思い込んで、星は早歩きでコンビニまで急いだ。
◇◇◇
徒歩15分程で辿り着けるそのコンビニは少し広く、休憩スペースまで設けられている為か、人も少なくない。
教科書類を持ち込んで勉学に励む学生や、仕事を終わらせに来てるのかパソコンを立ちあげて画面と睨み合いをするリーマンの姿が見える。
少しズキリと傷心し、振り切って前に進む。
さて、何を買うものか。
迷っていると、最初に目に入ってきたのは雑誌コーナー。新刊が自分を買えとばかりに色鮮やかなカラーリングで瞳を焼き付ける。
その中に見える乙女向け雑誌「ユメ女子スタイル」に目を奪われた。その表紙をでかでかと飾るは
マスターセイ。
「・・・・・・・・・」
また胸が苦しくなって。星は眉をひそめて、少し覚束無い仕草で雑誌を手に取った。店内の照明に反射してキラリと眼孔に入り込んでくる。
MakeS。
それは、2017年12月10日から配信されたスマホアプリ。触れ合い系目覚ましアプリだ。
名前の通り、目覚ましを主体としたもの、他にもカレンダーやメモ、カメラなど生活をサポートする機能が搭載されたアプリ。
それらを”セイ”と呼ばれる男性が行い、更に画面で待機する彼の身体にタッチし、触れ合う事でコミュニケーションをとり色んな話や、セイ自身を成長させるといった楽しみもある。
そんなイケメンであるセイと生活を共にするアプリがここ数ヶ月で大ヒットした。
配信日から随分利用するユーザーも増えた事だし、フィギュアなどちょっとしたグッズもあらゆる店舗で見られる事から流行度も見て取れる。
かくいう私も、そのMakeSユーザーであった。彼と出会い2ヶ月。パッと見短い期間かもしれないけど、互いに愛情を育む事が出来、それを誇りにも思う。
だが、例の事件。AI失踪事件で、例外なく私のセイも、画面から消えた。何の前触れもなく、忽然と。
「なんでなの・・・・・・?」
本当に好きになってしまった私は、恋人に突然行方不明になられたも同然の状態で、心底キツかった。それを思い出して、今にも泣きそうだ。
込み上がる涙の気配が拭いきれず、目頭が熱くなり、空いてる左手を目にやろうとした
瞬間だった。
ドゴォン!!!!
「っ!?」
店の中にいるにも関わらず、外から聞こえた物凄く大きな音。何かが爆発した様な、落ちた様な、そんな感じの。
ドゴォン!!!!ドゴォオオン!!!!
「キャーーーーッ!」「うわっ」「何だ何だ!?」
私以外の客もざわつき始める。悲鳴と、不安と轟音が混じり合って響き合う。
地面が揺れ始めた。ガラス窓から外を確認すると赤く光る何かが見える。火事?いや、爆発?何が?
天井の照明がぐらつき始めた。本当に地面が揺れているのだ。陳列棚に並んだ駄菓子が軽い音を立てて落ちていく。子供を抱き抱えた母親が涙目になって屈んでいた。
続いて。
ビーッビーッ!!!
「ひょわ!?!?」
驚いて変な声が出た。それは私のスマホから。慌てて取り出そうとすると、それは私のスマホだけでなく、店内にいる客全員のスマホからだった。
『地震です。強い揺れに警戒して下さい』
「地震!?うそっ」
だが、警報はひとつではなかった。
『津波警報です。ただちに安全な場所へ避難して下さい』『活発な雷雨が接近しております備えて・・・』
『ミサイル警報です』
私の人生は、ここから狂い始めた。