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Bottom of the sky

もし、私に彼の心が読めたなら。
ふっと短く吐き出した息が空へ靄を掛ける。
歩き慣れた道は、考え事をしていても支障が出ないのでこんな気分の日は有難い。
私の頭の中は今彼でいっぱいで、道を気にする余裕は無いのだ。
彼の心が読めたなら、私はどんなにか醜い人間に堕ちるだろうか。
今以上に醜い人間に堕ちてしまえば、きっと私の心は人の道を外れるだろう。
彼が美しいと思うもの、愛しいと思うもの。
私以外に向けられた彼からのその感情は、きっと私にとって憎悪の対象以外にはなりえない。
明るく蛍光灯が照らす道に、じんわりと影が染みた。
私の足元から先には決して進まず、けれど私の背後に道は無く。
いつの間にか私の背後にはぼっかりとした闇が広がっていた。
これだ。
これが私の背負う業だ。
私は彼が私に純白の笑顔を向ける度に、この業を恨む。
彼の穢れなき心が向けられる度に、この業が私に咎を忘れるなと囁く。
私は深く溜息を吐いた。
私には、幸せになる権利はないのだ。
少なくとも、今生では。
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