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「すごい!もう三個目」
盗聴器探しは順調であった。すると、名無しは何かに気付いた様子で、ある部屋の前で立ち止まる。先程の嫌な臭いが、この部屋の前に来て強くなったと感じた。名無しは恐る恐る扉を開ける。
「うわっ」
扉を開けると、鼻をつまみたくなるような嫌な臭いが辺りに広がる。
名無しの声を聞いた三人は、何事かと名無しの元へやって来た。
「どうしました?」
「……この部屋の臭いがすごいです」
安室に聞かれた名無しは正直に答える。この悪臭に気付いた小五郎と蘭も、不快そうに顔を顰めた。すると、安室の持つ機械が反応する。
「……この部屋にも盗聴器が仕掛けられているようです」
部屋に入り機械が大きく反応する場所を探し始める。
「盗聴器はベットの下のようです!」
ベットの下を覗き込む安室と小五郎。名無しと蘭は彼らの後ろで見守っている。
「臭いの元もそれみたいだね」
顔を顰めながら言う名無し。小五郎は恐る恐るスーツケースを開ける。すると、そこには目の疑うような光景が広がっていたのだ。
スーツケースの中に男性一人。頭から血を流し、目を大きく見開いて事切れている男性の姿。その形相は恐ろしいものだった。
この状況を理解したのか、蘭は大きく悲鳴をあげる。名無しも驚きのあまり体を硬直させていた。
まさか、一日で二度も死体を拝むことになるなんて……
名無しは何とも言えない気持ちになった。しかし、一体どういうことなんだろうか。何故、こんな所に死体があるのだろう。
安室が言うには、死因は撲殺。そして、死後一日強だと言う。
「家主の圭さんに聞きたいところだが、とっくのとうに逃げているだろうね」
下着を片付けてくると言ってから、全く姿を見せない樫塚。そして、トイレに行くと言ったきり戻って来ないコナン。
「名無しの言う通り、さっき玄関を通った時に彼女のブーツはありませんでした。あと、コナンくんの靴も無くなっていたのも少々きになりますね……」
この言葉に慌ててコナンと連絡を取ろうとする蘭と小五郎。すると、小五郎の携帯に一件のメールが届いた。内容は警察に通報、もしくは逃亡の邪魔をしたらコナンの安全は保証出来ないというというものだった。
名無しは思わずため息をつく。
「博士に連絡してみよう」
名無しの言葉に蘭は顔を上げた。安室は名無しの言葉に首を傾げる。
「阿笠博士です。コナンくん、いつも発信器付きの探偵バッジ持ってて……それを追跡できるメガネを博士が作って持ってるんです!」
蘭が詳しく説明してくれた。安室は興味深そうに相槌を打つ。
「それで、名無しさんもその阿笠博士のお手伝いをしていて……」
安室の視線が名無しに移動した。名無しは説明するのが面倒臭そうに頭をかく。
「まぁ、自称助手ですけれどね」
素っ気なく返す名無しに、安室はなるほどと頷いた。
「だから、白衣なんですね」
安室は名無しの白衣姿を、かっこいいから着用しているという理由では納得していなかったようだった。名無しは苦笑いを浮かべる。
名無しは阿笠博士に連絡を入れるのを蘭にまかせ、この家を歩き回った。先程からソワソワと辺りを見渡していたが、何か気になる事がある様である。
「見事に男物ばかりだ」
名無しは洗濯機の中を覗き込み、小さく呟く。シャンプーも雑貨も男物ばかり。
廊下に出ると安室とばたりと会った。安室は少し驚いた様子をみせる。
「何かありましたか?」
「見事に男物ばかりです。安室さんの方は?」
「下駄箱には男物の靴しか入っていませんでした。クローゼットの中も全て男物ばかり……」
妙ですねと呟く安室。名無しも顎に手を当て考え込む。
「とりあえず、毛利先生の元に戻りましょう」
「はい」
部屋に戻れば、小五郎が窓を開け換気をしていた。いくらか悪臭もマシになったであろう。安室は小五郎と蘭に、この部屋が妙であることを告げた。下駄箱、洗濯機の中、衣類全て男物だけ。
「じゃあ、ここに住んでたのは圭さんの亡くなった兄だけだったって事か?」
小五郎の問に安室は首を横に振る。
「それはまだ分かりませんが、この部屋の住人が先日に起こったある事件にかなり注目してきたのは確かですね……」
「ある事件?」
安室に促され、リビングにやってきた名無したち。テレビをつけ、録画一覧を映し出す。録画一覧には、ニュースやワイドショーばかりであった。しかも、その内容はこの前の銀行強盗事件のコーナーだけを切り取ったものばかりである。
困惑しながらそのニュースを眺めていると、犯人に射殺された銀行員の男の顔写真が映し出された。名前は庄野賢也とある。小五郎と蘭は驚きの声をあげた。
「こ、この男の人……」
蘭は、この男の人は樫塚圭のお兄さんだといった。事務所で事情聴取を受けている時に樫塚の兄だと見せてもらったらしい。
「これが彼女のお兄さんなら、何故名字が違うんだ?結婚してるの?」
名無しは蘭を見るが、彼女は首を横に振る。そこまではわからないらしい。
「それにしても不思議だね」
「ええ、不思議です」
名無しは独り言のつもりだったが、安室から言葉が返ってきて驚いた様子である。安室は気にする素振りを見せず、続けた。
「こんなにニュースやワイドショーをわざわざ撮り溜めているという事は、余程の犯罪マニアか犯人に復讐を目論む被害者遺族か、もしくは強盗本人と考えた方が自然ですよね?」
小五郎と確かにと頷いた。しかし、蘭は安室の方をじっと見つめている。
死体のあった部屋のパソコンを調べようと、扉に手をかける安室に蘭はこっそりと近付いた。
「あ、あの……どうしてそんなに切れる探偵なのに、父の弟子なんですか?」
蘭は先程の安室の行動に疑問を持っていたらしい。名無しは静かに耳を立てている。安室の返答はこうだった。
先生である毛利小五郎は悩んでいるフリをしていて、安室を試しているんだと。僕なんてまだまだですよと笑って、パソコンのある部屋へと向かう。蘭は安室の言葉に納得していない様子を見せたが、これ以上何も言わなかった。名無しは安室の出て行った扉をじっと見つめる。
「うそつき」
名無しの口から零れた言葉は誰にも拾われることはなかった。