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樫塚圭。トイレの中で頭から血を流している男の横で縛られていた女性の名前だ。
彼女は、コインロッカーの捜査を小五郎に依頼するためにここへ訪れた。そこで、小五郎の助手だと名乗る男に出迎えられ、スタンガンで気絶させられてしまったらしい。その後、ガムテープで拘束され、トイレに押し込まれていたと。
通報を受け、この毛利探偵事務所にやって来た目暮警部と高木刑事。樫塚はポロポロと涙を流しながら、彼らからの事情聴取を受けていた。
「……」
名無しは彼らから少し離れたところに立っている。そして、小さくため息をついた。
たびたび、このような現場に居合わせるし巻き込まれる時もあった。しかし、その数が多かろうが少なかろうが、このような血なまぐさい現場にはまったく慣れない。
「大丈夫ですか」
「わっ」
ぼんやりとしていた名無しは、安室の気配に気付くことは出来なかった。安室は名無しの顔を覗き込み、心配そうな表情を浮かべる。名無しは安室の顔が至近距離にあるために、恥ずかしくなり顔を背けた。この男、色んな理由で心臓に悪いと名無し心の中で思う。
「大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
「……本当に?」
「ええ」
疑うような目で安室は名無しを見たが、すぐに諦めたようにため息をついた。そして、無理は禁物ですよと一言告げて目暮たちの元へ向かう。名無しは胸の中にあるぐちゃぐちゃな思いを吐き出すかのように、大きく息を吐いた。そして、強く目をつぶった。
名無しは安室透の青い目に見つめられ、酷く狼狽えていたのだ。彼は降谷零ではない。彼は安室透なのだ、と名無しは自分に言い聞かせる。
「名無しさん、大丈夫?」
軽く名無し服の裾を掴むコナン。名無しはその言葉に軽く頷いた。そして、コナンの手にあるものを握らせる。
「これは?」
「盗聴器。博士の新作」
「オレの用事ってこれの事か?」
「そう」
名無しの言った用事というのは、博士の発明品をコナンに届けることであった。家に帰るついでに寄ったつもりが、まさか事件に遭遇するとは思わなかった。こんな事になるなら大人しく帰れば良かったと、名無しは酷く後悔する。
「ねぇ、気になってたんだけど安室さんって何なの?」
名無しはしゃがみ込み、コナンの耳に口を寄せた。すると、コナンは言ってなかったっけと言ったような表情を浮かべる。
「昨日言っただろ。おっちゃんに弟子ができたって」
「はぁ!?」
名無しは素っ頓狂な声を上げた。そして、樫塚と話し込んでいる安室の姿を凝視する。
「えっ、彼が?小五郎さんの弟子……?」
嘘だろと口元を覆う名無しに、コナンは苦笑い。高校時代から彼の頭の良さを目の当たりにしていた名無しは、彼のとった行動に理解できない様子である。名無しは彼を見つめながら思考する。
(何だかすごい違和感を感じる……)
何がとは言えない。しかし、彼に対して何故か違和感を感じた。名無しは顎に手を当て考え込む。
「名無しさんも、お送りしますよ!」
「え?」
安室の声に寄って現実に引き戻された名無しは驚いたように顔を上げた。まったく話を聞いていなかった名無しは首を傾げ、安室を見る。
「彼女を車でお送りするので、名無しさんも良かったらと思いまして」
安室はにっこりと笑顔を浮かべる。名無しはここで断るのも変かと思い、お願いしますと頷いた。
ポアロの前で安室を待っていれば、白いRX-7を乗ってやって来た。
樫塚は助手席へ、名無しとコナン、毛利親子の四人は後部座席へ乗り込もうとする。しかし、四人乗り込むのには少々キツい部分が見られた。名無しは少し考え込み、コナンに問いかけた。
「私の膝と蘭ちゃんの膝、どっちがいい?」
「へっ!?」
名無しの問いに驚いた様子を見せるコナン。蘭と名無しの視線を行き来させるコナンに、名無しは薄く微笑んだ。そして、名無しはコナンの脇に手を突っ込み、抱き上げて蘭の膝に乗せる。
「愚問だったね」
「へっ、ちょ、なん」
蘭の膝に乗せられたコナンは顔を真っ赤にさせていた。蘭も、名無しの唐突な行動に驚きを見せる。
「やはり、三十近い私の膝よりも現役JKの蘭ちゃんの方がいいよね」
名無しは扉を閉め、安室によろしくお願いしますと告げる。一部始終を見ていた安室はくすくすと笑いながら車を発進させた。
「三十近くって……名無しさん、まだまだ若いですよ。三十近くに全く見えない」
「蘭ちゃんってば、嬉しいことを言ってくれるなぁ」
名無しは嬉しそうに目を細める。そして、彼女を恨めしそうに見るコナンの頭を軽く撫でたのだ。