No Title
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お昼すぎ。名無しは阿笠博士に頼まれ毛利探偵事務所に向かっていた。
しっかり睡眠をとり食事をとったおかげか、肌の調子も体調もすこぶる良い。名無しは白衣を着たまま、ヒールを鳴らし、軽い足取りで毛利探偵事務所まで足を進めた。
「この時間帯だと、事務所の方に行けば確実かな」
コツコツとヒールを鳴らし、階段を上がる。そして、ノックをしようと片手を上げたその時だった。
「名無しさん?」
階段の下の方から複数の足音と声。名無しは驚いてそちらに視線を移す。
「あれ、皆さんお揃いで……」
そこに居たのは毛利小五郎とその娘の毛利蘭。そして、コナンがいた。また、何故その三人と一緒にいるのかわからないが、安室透の姿もある。
「コナンくんに用があって来たんですけど、お取り込み中ですか?」
なるべく安室と目を合わせないように、名無しは声をかけた。コナンは階段を駆け登り名無しの側までやって来る。
「名無しさん、ボクに用があるって言ってたけど……」
「ああ、博士からのお届け物。でも、後での方がいいね」
少し小さな声でやり取りをする二人。名無しはコナンの頭を軽く撫でると、事務所の扉の前までやって来た小五郎たちに向き直った。
「依頼でしょうか?急用ではないので、また日を改めて来ますね」
さっさと退散しようとにこやかに笑う名無しに、小五郎は凄い勢いで顔を横に振った。
「いえいえとんでもない!依頼人に話を聞くだけなので、直ぐに終わりますよ!なんなら名無しさんがいてくれた方がモチベーションが上がってすぐ解決してしまうかも知れませんな!!ナーハッハッ」
腰に手をあて、高笑いをする小五郎。名無しはどんな反応をして良いのかわからず、苦笑いを浮かべた。本当ならばここで退散したいのだが、またここに来るのも面倒だという思いもあり、小五郎の言葉に甘えることにした。
事務所の鍵を開けている蘭を横目に、安室は名無しに対して笑顔を浮かべる。
「昨日ぶりですね、名無しさん」
「そうですね。昨日ぶりです」
平常心を保ちつつ、安室の言葉に応える名無し。
「それにしても、何故白衣を着ているんですか?」
安室は名無しの白衣姿を不思議の思ったようで、首を傾げてこちらを見ていた。名無しは気に止める様子も見せず、さらりと応える。
「頭が良さそうに見えるからです」
「はい?」
安室は理解できないというような表情で名無しを見た。まるで、こいつは一体何を言っているんだと言いたげであった。名無しはそんな安室の表情に驚きを感じる。安室透もこのような表情をするのだと。
傍で聞いていたコナンも呆れたように名無しを見ていた。
事務所の扉が開いたようで、お邪魔しますと一言行って入室する。
「……誰も待ってねーし」
小五郎の言葉に、名無しは疑問を覚えるが大人しく壁際にいた。
「一応、最初のメールアドレスにすぐ戻るってメール出したんだがな……」
「じゃあ、その内返事でも来るんじゃない?」
どうやら、小五郎たちは依頼人と待ち合わせをしているが、未だに会えていにいらしい。先程からちょこまかと動き回っているコナンに、名無しは静かに近付いた。
「なんかあった?」
「……ああ」
名無しはしゃがみこみ、コナンの方に耳を傾ける。コナンは小さな声で名無しに告げた。
「そのままにしてあったタバコの灰が綺麗に拭き取られてるんだ」
名無しはその言葉にテーブルに視線を向けた。そして、辺りをキョロキョロと見渡す。
コナンの言った通りなら、小五郎たちが事務所を空けている最中に何者かが侵入したということになる。
「ちとトイレ……」
「……」
名無しは立ち上がり、事務所の扉を開け外側の方にある鍵穴を見た。
そこには鍵穴をこじような跡がある。
「お!依頼人から返事来たぞ!たった今コロンボに着いたとよ」
「だったら早く行かなきゃ!」
二人の会話の傍で名無しは考え込む。すると、先程までティーカップをじっと見つめていた安室と目が合った。名無しは悩んだ末、彼に近付き小さな声で告げる。
「ここに誰かが侵入した形跡があります」
安室は驚いたように名無しを見る。そして、にっと口角を上げ、口元に人差し指を持ってきた。今は小五郎たちに黙っておくのがベストらしい。名無しは小さく頷く。
それにしても、安室透と小五郎たちはどういう繋がりなのか疑問を抱いた。普通に考えれば店員と客の関係だろう。
「また依頼人からメール……急いで皆で来てくれって……」
「皆って私たちも?」
「他に誰がいるんだよ?」
何だが雲行きが怪しくなっているように感じる。名無しは帰った方が良いのではと思った。しかし、中々言い出せる雰囲気ではなく諦める。
「ではまた、皆でコロンボに行きましょう!」
「え?」
安室はそう言うと、蘭の背中を優しく押して事務所の外へ。コナンも小五郎を事務所の外へと押し出す。安室とコナンの行動の意味を理解していた名無しは、静かに二人の後に続いた。
パタリと扉が閉まる。
「恐らく……こういう事ですよ」
安室が静かに口を開いた。
依頼人を小五郎に会わせたくない人物がいて、場所変更のメールで先生を追っ払い、空になった探偵事務所で事務所の人間としてその依頼人と落ち合った。安室はそう言った。
「その証拠に入口のこのドアの鍵穴にはこじ開けたあとがあり、食器棚の中に僅かに濡れたティーカップがありました」
名無しは先程の安室の行動に納得をする。じっと安室の推理を聞いていた名無し。安室は名無しに視線を合わせ、にっこり笑った。
「それにさー……」
コナンが続く。
「テーブルの上に落ちていた灰も綺麗に拭き取られていたよ?これってボクたちがでかけている間に誰かが拭いたんじゃはいかなぁ?」
この二人の言葉を聞き、青ざめる小五郎と蘭。名無しは安心させるように、蘭の背中を軽く叩いた。
「本人に直に聞いてみましょうか!」
安室はそう言って、扉を開ける。この言葉にに二人は驚きた様子を見せた。
「先生がトイレに入ろうとした時に、丁度返信がきましたよね?そして、コナンくんがトイレに入ろうとした時も……」
ああ、なるほどと名無しは思った。それと同時に、安室の先生という言葉に気を止める。
「それに、トイレの前の床にさ、中を引き摺ったような跡がついてたよ!」
名無しは遠目でトイレのドアの方に視線を向けた。コナンの言う通り、引き摺るような跡があるのが見える。
「そう……恐らくは、その誰かは何らかの理由で依頼人を連れ込み、まだ隠れているんですよ。あのトイレの中にね……」
一同の視線がトイレの方に向かい、空気が張り詰める。その時、パァンッと何かが破裂するような音が事務所に響いたのだ。