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パソコンを立ち上げるが、案の定ロックがかかっていた。考えられるのは生年月日や語呂合わせなどである。四桁のものであれば推測はしやすいのだが、文字数が決まっていないとなると難しい。どうしたものかと考えていると、名無しは安室の行動に目がいった。パソコンが乗ってある机の下を覗き込んでいたのだ。机の下に何かあるのだろうかと、名無しが覗き込もうとした時、安室が口を開く。
「三人はパスワードとかどうされています?」
笑顔で問う安室に、戸惑いながらも答える三人。蘭は生年月日、小五郎は語呂合わせと答えた。名無しもそれらしい答えを口にする。しかし、安室が求めていたのは短いパスワードではなく、とても長く覚えきれないパスワードであった。
小五郎は机の下をガサゴソと探りながら答える。
「俺なら、紙に書いて誰も見えねぇようなこういう場所に……」
ハッとする小五郎。どうやら机の下にパスワードが書かれたメモを手に入れたらしい。その様子に感嘆の声あげる安室と蘭。名無しはその横でジトリと安室を見た。
何がさすがですだ。誘導したくせに。名無しは心の中で呟く。
小五郎がパスワードを入力し、ロックを解除する。そして、デスクトップにあったファイルをクリックした。
「おいおいおい!」
小五郎は驚きの声をあげた。ファイルをクリックして出てきたのは、この前の銀行強盗の計画書である。しかも、強盗犯三人が拳銃を持っている写真まで貼ってあった。その写真の下には「犯行前夜記念!」と書かれている。
「男二人と女一人か。真ん中の人は事務所で死んでた人で右端の男はスーツケースに入ってた人かな」
名無しの言葉に安室は頷く。
「その女の人とメールで連絡してたみたいですね」
メールの件名には「拳銃は用意できた?」と書いてあった。そして、その女性からの引越しメールもある。有難いことに住所も載っていた。
「もしかしたら、コナンくんを連れ去った彼女は……庄野さんの敵を取るために、その女性の元に向かったのかもしれませんから」
名無したちは、メールに記載された住所に向かうため、安室の車に乗り込んだ。名無しは助手席へ、小五郎と蘭は後部座席へ乗り込む。
車を走らせている最中、蘭はコナンからメールが来ていたことに気付いた。
「大丈夫だから心配しないで」という内容である。名無しはそのメールに安堵するが、大きなため息をついた。
「どうやら、あの子自ら彼女について行ったようですね」
安室の言う通り、コナンは自らの意思でついていったようである。まったく、と名無しは不満げに零した。
「あのガキ……探偵気取りかよ」
小五郎も呆れたように言葉を吐き出した。
「まぁ、子供の好奇心は……探偵の探究心と相通ずるものですから」
車の外を少し気にしている様子の安室は、静かに呟く。名無しはチラリと安室を盗み見ると、すぐに目線を正面に移した。
「好奇心は猫を殺すとも言いますがね」
「はは、肝に銘じておきます」
とりあえず、コナンは後で説教だと名無しが言うと、小五郎は乾いた笑いを零し、ほどほどにと弱々しく言った。
しばらく車を走らせていると、名無しの携帯に一件の着信が入った。画面には阿笠博士の文字がある。名無しは安室に一言告げ、電話に出た。
「もしもし」
「ああ、名無しくん!」
電話の内容は、コナンを乗せた車が王石街道を北上しているというものである。幸いなことに、今、車を走らせているこの道が王石街道であった。
名無しは運転手である安室にそれを告げ、阿笠から教えてもらった車種と色とナンバーも告げる。すると、安室は何かに気付いたようで、車をUターンさせた。驚いた名無しは、車の窓に軽く頭をぶつける。
「毛利先生、そのまま右側のシートベルトを締めてください。蘭さんはシートベルトを外して、毛利先生のそばに寄ってください」
安室のこの言葉に戸惑う三人。戸惑いながらも蘭は素直にシートベルトを外し、小五郎のそばに寄る。
「毛利先生、蘭さんをしっかり抑えててくだいね」
「えっ」
「名無しさん」
安室は名無しの名前を少し強く呼んだ。名無しは先程の安室の言動から何かを察し、大人しくシートベルトを外す。すると、安室は名無しを強く抱き寄せた。
「うわっ」
「お、おい何やってんだ!?」
安室の行動に慌てる様子をみせる小五郎と蘭。名無しは急に抱き寄せられたことにより、脳内でプチパニックを起こしている。
安室は彼らの様子を気にすることなく、勢いよくハンドルを切った。安室の車に青い車が激しい勢いで衝突する。耳を劈くような音、そして、車内に飛び散るガラスの破片。名無しは思わず安室にしがみついた。
「大丈夫ですか?」
名無しの頭上から安室の声がする。名無しは恐る恐る目を開けた。目を開けると至近距離に安室の端正な顔があり、名無しは思わず悲鳴をあげる。
「ひぃっ」
安室は名無しの悲鳴に眉をひそめたが、すぐに表情を元に戻す。名無しは安室の腕の中で、ゆっくりと辺りを見渡した。
小五郎と蘭は既に車から降りており、コナンの元へ向かったようだ。車の外に何故か世良に抱きしめられているコナンの姿を捉え、名無しは安堵した。
「……死ぬかと思った」
意図せず名無しの口から零れた言葉。名無しを抱く安室の腕に力が入る。
「大丈夫ですよ」
「決して名無しさんを死なせたりしません」
安室は青い目が名無しを捉える。そして、ふんわりと優しく微笑んだのだ。
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