人形の家
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あの後特に大きな事は起きず、夜が明けた。
名無しは身支度を整えたあと、SPRのベースに顔を出す。
「おはようございます」
「おっ、名無しちゃんおはよ」
滝川が片手を上げ挨拶を返す。
名無しは滝川の隣に腰を下ろした。
「何か変化は?」
「いーや、目立ったことは特に。名無しちゃんの方はどうなんだ?」
「こちらも目立ったことは無い」
滝川はじっと名無しを見つめる。その視線に気付いた名無しは首を傾げた。
「昨日から疑問だったんだが、サングラス外さないのか?」
名無しはどこか慣れたように、「ああ」と頷いた。名無しの様子からしてこの問いには慣れているようだ。
「仕事中はずっとかけているようにしている。こういう仕事だからあんまり顔を覚えられると面倒だしね。あと霊と目が合わないように」
「霊に?」
滝川よりも先にナルが口を開いた。どうやら興味がある話題らしい。
ナルの様子に名無しは笑みを浮かべた。
「うん、そう。前に面倒事があってね。別に害は無かったんだが、ずっとついてきてね。しつこいったらありゃしない」
あの時のことを思い出したのか、顔を顰める名無しに滝川は同情する。
「あと目が合うなり追いかけてくる霊もいたな。あの時は久しぶりにヒヤヒヤした」
またもや顔を顰める名無し。滝川はその光景を想像したのか、表情は青ざめている。
「随分と面白い体験をしているんだな」
ナルの言葉に名無しは苦笑い。
「面白いって……ナルも一回体験してみるといいよ。血だらけの女が四つん這いで追いかけてくるんだ」
「……興味深いな」
名無しと滝川はナルの様子を見てため息をついた。
その時、扉が勢いよく開けられる。扉に視線を向ければ、少女が立っていた。
確か名前は谷山麻衣といっただろうか。
名無しは昨日の自己紹介の場面を思い出す。
麻衣の話によれば、礼美が奇妙なことを言っているらしい。
義母である香奈は悪い魔女。魔法で父親を家来にした。典子と礼美が邪魔だから殺そうとしているとミニーが教えてくれた。
「礼美ちゃんがそんなことを?」
「うん……なんか気味悪くない?」
麻衣の言葉を聞いて、何やら考え込むナル。
「名無し」
急に名前を呼ばれ、顔を上げる名無し。
いつの間に呼び捨てにされている名無しだが、彼女にとって特に気にすることではなかったらしい。
「礼美ちゃんの周りに霊はいたか?」
名無しは考える素振りを見せ、答える。
「私が見た時は、礼美ちゃんに近づく霊はいなかったかな」
名無しが答えれば、ナルは頷く。
そして、ナルは名無しについて来いと一言告げ、部屋を出ていってしまった。
名無しは困惑しながらもナルの背中を追う。
「ミニーならこれですけど……」
ナルがミニーと呼ばれる人形を手に取り、まじまじと観察する。
名無しもナルの横から顔を出し、ミニーを観察していた。
「名無し、どうだ?」
「見たところただの人形だな。特に何も感じない」
ナルと名無しの会話に典子は首を傾げる。
「この家に越してくる直前に、兄が買ってやったんです」
「礼美ちゃんの様子が変わったのはそれ以前?以後?」
「後だと思いますけど」
名無しはミニーを手に取ってよく見てみるが、霊が憑いているような感じはしていない。
「返してっ!」
「おっと」
いきなりの衝撃によろめく名無し。視線を下に移すと礼美がいた。
「ミニー返して!触らないで!」
「礼美ちゃん、ミニーとお話が出来るんだって?」
ナルがすかさず礼美に問うが、礼美は聞く耳を持たない。礼美は名無しからミニーをひったくり、走り去ってしまった。