人形の家
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「おまえ、まーた失敗しやがったな」
「わーるかったわね!どーっせ、私は無能ですよ!」
軽く言い合う滝川と巫女装束の女性。
そんな二人を横目で見ながら、名無しは困惑していた。
あの後、滝川に連れられSPRのベースにやって来たのはいいものの、ほぼ放置状態である。
SPRの所長であるナルは機材を確認し、女の子は頬を両手で抑え、何やら考え事をしているようだった。
名無しは意を決し、ナルに近付き声をかける。
「忙しいところ申し訳ないです。えーと、ナルさん?ナルくん?」
名無しがこう言うと、ナルは眉間にシワを寄せた。名無しは自己紹介の時の少女の「ナル」という言葉に、彼の名前を「ナル」だと勘違いしているらしい。
近くで聞き耳を立てていた滝川と少女は口元を抑え、肩を震わしていた。
ナルは名無しに「ナルでいいです」と伝え、何の用だと聞く。
「滝川さんに連れられてきたが、私に何か用があったんじゃないのか?」
そう伝えると、ナルは名無しをじっと見つめる。
「方喰さん、貴方は霊視出来ますね」
もはや疑問形ではない。名無しに霊視の能力があると確信して聞いてくるナル。
しかし、名無しは気にする様子を見せずに頷いた。
側で聞いていた少女の方が驚きの様子を見せている。
「ええっ!!方喰さん幽霊見えるのっ!?」
少女の大きな声にナルは顔を顰めた。
名無しは少女のことをちらりと見ると、ぽつりぽつりと話し始める。
「そうだね……まず、この家には多くの子供の霊がいる。あの時、一体は棚を倒そうとしていた」
「なるほど。あの行動はそういうことか」
名無しの言葉に納得するナル。
「他に何か分かったことは?」
「特に何も」
ナルが頷く。
「それにしても、さっきのあれ。あの子の叫びに応えるみたいだったな」
あの時のことを思い出すように口を開く滝川。ナルが滝川を見る。
「礼美ちゃんが犯人だと?」
「暗示実験じゃ犯人は人間じゃないんだったっけな。結果にどんくらい自信あるよ?」
「百パーセント」
二人の会話に名無しは首を傾げた。そして、近くにいた少女に話しかける。
「暗示実験って何?」
急に話しかけられた彼女は、驚きながらも丁寧に答えてくれる。
「えーと、催眠術みたいなものです。
ポルターガイストの犯人が人間かそうじゃないかを調べる実験です」
「へぇ……」
名無しは面白そうに目を見開き、ナルの方に視線をやった。
その時だ。
「ナル。温度が下がり始めました」
先程から一言も喋らなかった長身の男が、声を上げる。名無しを除く三人はハッとし、モニターに近寄った。名無しは少し離れたところでモニターを見ている。
ゴト、ガタッガタン、ドン!
ドン!ドンドン、ガタガタ……
スピーカーから大きな物音が聞こた。
「礼美ちゃんの部屋、誰もいないのに……!」
「__すごい」
ナルが食い入るようにモニターを見、声を漏らす。
「……何が?」
「温度だ。すごい勢いで下がっていく……ほとんど氷点下だ」
氷点下。その言葉を聞いて名無しは顔を顰めた。
そう、氷点下。人間の能力で出来るはずがないのだ。
「確定だな」
名無しの言葉にナルは頷く。
「……礼美ちゃんではありえない。絶対に人間の仕業じゃない……!」