人形の家
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悲鳴のした部屋を覗けば、物凄い勢いで火柱がたっていた。名無しと滝川に続き、ナルたちもやって来る。
「急に火が……」
怯える香奈を後ろに下がらせ、ナルは指示を出す。消化器、バケツを持って消化にあたる滝川たち。
しかし、名無しは彼らの持つバケツを引ったくり全身に浴びる。唖然とする彼らたちの横を通り抜け、自ら火の中に手を突っ込んだ。
「なっ!何してんだ!?」
「ちょっ!?危ないわよっ!!」
名無しは慌てる彼らたちを無視し、元栓を閉める。
呆気に取られる滝川たちに名無しが叫んだ。
「手動かして!!」
立ち尽くしていた彼らは、名無しの声に反応しせっせっと手を動かす。
そのおかげで大分火の勢いも弱まってきた。
「ちょっと!あんた!」
無事鎮火しお疲れモードになっているこの部屋で、巫女装束の女がズカズカと名無しの元にやって来た。
「いきなりあんな事して!危ないじゃないのっ!!」
名無しの頭にタオルが被せられ、ゴシゴシと拭かれる。心配してくれたのだろうか。
見た目からキツそうだと思っていた名無しだが、人は見かけによらないのだと失礼な事を考えていた。
「ちょっと、聞いてるの!?」
「あ、はい。ありがとうございます」
女性の声に思わず背筋がピンとなる名無し。そんな様子を見て滝川がクスクスと笑っていたその時、
「ナル!誰かいる!」
女の子が声を上げ、窓を指さした。
ナルは急いで窓を確認するが誰もいない。
もちろん、名無しも確認しに行くが誰も見当たらなかった。
「いたの!中を覗いていた子供が……」
"子供"その言葉に自然と典子の方に視線が行く。
しかし、名無しは何か考えている様子だった。
「礼美はもう寝てるはずよ。私の部屋で……」
部屋にいる皆が弾かれたように、礼美の元へと向かってしまう。
「……」
未だに考え込んでいる名無し。
最後に部屋を出ようとしたナルは名無しを見た。
「気になる事でも?」
名無しはハッと顔を上げ、ナルを見る。
「……いえ、なにも」
名無しはナルの背中を追うように、部屋から出た。
扉の側から部屋を見当たす。
礼美は人形で遊んでいるようだった。
人形遊びをしている礼美に、典子は近付いた。
「礼美、さっき台所覗いてた?」
この問いに礼美は首を横に振る。さらに詰寄る典子。
「ちがうもん」
「礼美!」
「礼美じゃないもん!」
礼美と典子のやり取りがどんどん激しくなって行く。そして、
ドンドンドン
「な、なに!?」
突然壁を叩くような音が響き渡った。
「礼美じゃないもん!」
「ちがうもんっ!」
それは礼美の叫びに呼応するように、どんどん激しさを増していく。
状況を掴めていない滝川たち。名無しは静かに部屋を見渡した。
「子供……」
「は?」
名無しが零した言葉に、隣にいたナルが反応する。
名無しの目には棚に手をかける子供の例の姿が見えていた。名無しはもう既に傾きかけている棚に手を伸ばす。
「こら。いけないよ」
棚の側にいる子供は驚いたように名無しを見上げた。子供の霊同様に急に声を出した名無しに驚いて、一同は名無しに視線を向けている。
名無しは棚が倒れないよう、押さえながらもう一度言った。
「いけない」
その瞬間、壁を叩いているような音も止み辺りに静寂が広がった。
名無しは緊張が解けたように息を吐く。
「典子さん、お怪我は?」
「い、いえ、大丈夫です」
声をかけられた典子は戸惑いながらも返事をする。未だに視線を集めている名無し。
名無しもまた不思議そうに彼らを見つめていた。