人形の家
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「ここで半年に三人の子供が死んだ」
スピーカーから聞こえるナルの言葉に、名無し、リン以外の皆は顔を青くする。
ベッドで寝ている礼美、その隣で口を抑える典子。また、麻衣は驚いた表情でナルを見ていた。名無したちはこの様子を静かに画面越しから静かに眺めている。
十、八、七歳の男二人、女一人。それぞれ病気や事故だが無くなっている。そして、この他にも八歳前後の子供が亡くなっている。
「こういうことの専門家を呼びます。家を出るのでしたら、せめて彼が来るのを持ってください」
今すぐにでも家を出ようとしている典子に、ナルは冷静に言葉をかける。
「彼の言う専門家って誰のことだ?」
静かに様子を見ていた名無しは、近くにいる滝川に声をかけた。滝川は少し考え込む様子を見せ答える。
「ナルちゃんの交友関係はわからんが、多分、原真砂子とジョンのことを言っているんじゃないか」
「ああ、彼女か……ジョンというのは?」
「ジョンは、エクソシストだよ」
エクソシスト。名無しはその言葉を聞き、にんまりと笑う。随分と個性的な仲間たちじゃないかとくつくつ笑えば、滝川は苦笑いを浮かべた。
「どこに笑う要素があるんだよ」
「ふふ、すまない」
少々重苦しい雰囲気の中だが、名無しと滝川のやり取りで少しは和んだ様子だった。
しばらくすると、ナルと麻衣がベースに戻ってくる。
「絶対人形に何かあるって!前にも経験あんだよ」
ナルの姿を捉えた滝川は、早足でナルのもとに近寄った。
「人形を可愛がっていた女の子の霊が、人形を操って家ん中歩き回ったってのが!」
「人形自体に問題はないだろう。この家の地縛霊がミニーに憑依しているだけだ」
滝川はナルに必死に訴えるが、ナルは意見を変えることは無い。そんなナルの態度に滝川は険しい顔でナルを見続けている。
その時、ピンポンと家のチャイムが響いた。
一同は顔を見合わせる。そして、麻衣は一言告げてから玄関の方へ向かった。
「専門家のご到着かな」
のんびりとした口調の名無しをナルは一瞥した。そして、滝川も呆れた様子で名無しを見ている。
「お前さんは呑気だな」
「そうかな?適度な緊張感は持っているつもりだけど」
くすくすと笑う名無し。流石にナルも呆れた様子で名無しを見た。そして、ため息をつく。
「大丈夫?ベースについたよ」
「真砂子?やだ、どうしたのよ」
扉の音と共に、ベース内が悪い意味で賑わう。名無しとナルは扉の方に視線を移した。
麻衣に肩を抱かれる一人の少女。肩で切り揃えた黒髪、華やかな着物姿の少女である。まるで日本人形のようだ。名無しはその少女を視界に捉え、目を細める。
原真砂子。口寄せにおいては日本一流。お茶の間でも有名な霊媒師である。
名無しは椅子から腰を上げ、彼女に近付こうとした。しかし、名無しが近付く前に彼女はナルの方へ倒れ込んだ。
「なっ!?」
名無しの横で凄い形相を浮かべる麻衣。そんな麻衣の表情にギョッとしながらも、名無しは口を開く。
「……顔色が悪いな。瘴気に当てられたのかもしれない」
真砂子は不審者じみた格好の名無しに驚きながらも、青白い顔で頷く。
「ここはまるで霊の巣ですわ。子供の霊が至る所にいますわ。皆、とても苦しんで……お母さんのところに帰りたいと言って泣いています」
真砂子の言葉を聞き、名無しは考え込む素振りを見せる。
「この家、霊を集めていますわ。全部子供の霊です……」
真砂子はそう言って、ふらつく様子を見せた。麻衣は声を上げ、真砂子を支える。
名無しはぐったりとした真砂子に近付き、するりと真砂子の頭を撫でた。
「……少し、横になった方がいい。麻衣ちゃんお願いできるかな?」
「う、うん」
名無しの行動に少し戸惑った麻衣だが、名無しの頼みに素直に頷く。そして、真砂子を連れてベースから出て行った。
「……名無し」
先程の様子を見ていたナルは、じっと名無しを見つめている。その表情は何か言いたげであった。しかし、名無しは気にする素振りを見せず腰を下ろし、ペラペラと資料に目を通し始めたのだ。