人形の家
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「原因はミニーかよ」
名無しが黙々と資料に目を通している横で、戻ってきたナルたちは話し合っている。
「以前の持ち主が病死して、その霊が憑いてるとかかな」
「だから、あたし人形ダメなのよ〜〜〜!」
顔を顰め、両腕を摩る綾子。
名無しは滝川の意見に反対しようとしたが、その前にナルが否定した。その様子に名無しは満足し、再び思考を巡らせる。
「何とかして、正体を掴まないと礼美ちゃんが危ない」
原因はミニーではないと断言するナルに、滝川たちは眉をしかめている。しかし、ナルは気にしない。
ナルは滝川たちから視線を名無しに移動させ、黙々と資料を眺める名無しの前に立った。
「名無し」
ナルが名前を呼ぶ。しかし、名無しは反応しない。どうやら名無しは考え事に夢中のようだ。
「名無し」
ナルがもう一度呼ぶ。しかし、それでも反応しない名無しに対して、麻衣は顔を青くして見守っていた。
「……」
ナルの眉間が不機嫌そうに寄せられる。そして、ため息をついたあと名無しに向かって手を伸ばした。
バチン。乾いた音が部屋に響く。
ナルの白くて細い指が、名無しの額を弾いたのだ。サングラスで表情は見えないものの、名無しは驚いた様子でナルを見上げている。
一部始終を見ていた麻衣たちは、ぎょっとした様子でこちらを見ている。
「名無し、霊を一時的に封じることは出来るか?」
「払うのではなく一時的に動きを封じると?」
名無しは痛そうに額を押さえながら、首を傾げた。そして、少し考える素振りを見せたあと頷く。ナルは名無しの反応に満足気な様子だ。
「ちょ、ちょっと、ナル!」
傍で二人のやり取りを見ていた麻衣は、ハッとして声を上げる。
「名無しさんのおでこ真っ赤じゃん!やるならもう少し加減しなさいよっ」
どうやら名無しを心配してくれていたらしい。麻衣に続いて滝川も口を開く。
「そうだぞナル坊。こんな不審者みたいな格好でも女なんだから、もうちっと優しく扱わねーと」
「不審者って……」
滝川の言葉に綾子は呆れたようにため息をついた。声を上げる二人に対し、ナルは顔を顰め睨みつける。
すると何を思ったのだろうか、その様子をじっと見ていた名無しは、近くにあったナルの手をそっと掴んだ。
「なっ」
「へっ」
表情を一切動かさずに固まるナル。そして、すごい形相で名無しを見る麻衣。さすが、恋する乙女と言ったところか。
滝川と綾子は面白そうにその様子を見ている。
「ナルの手、すごい綺麗だね」
「はぁ!?」
「ぶっ」
真顔でまじまじとナルの手を眺める名無し。
麻衣は声を荒らげ、滝川は吹き出す。
ナルはというと、若干プルプルと震えていた。
「なんのハンドクリーム使ってるんだ?」
「っ……」
やや、乱暴に名無しの手が振り払われた。しかし、名無しは気にすることなくナルを見つめている。どうやら、答えを待っているらしい。先程の行動で不機嫌になったナルは、得体の知れない生物を見るかのような目で、名無しを見下ろしている。
「……ハンドクリームは使っていない」
やや、間があってこう答えたナルは、名無しに背を向けてしまった。名無しは、ナルの言葉を聞き羨ましそうに感嘆の声を漏らす。
「あっはっはっはっ、嬢ちゃんやるね〜!!」
ナルとリンが黙々と作業を再開する後ろで、滝川は名無しの頭をぽんぽんと撫でている。
「……逆にバラのハンドクリームとか使ってた方が驚きだっつーの」
若干不貞腐れ気味の麻衣。綾子は麻衣を慰めるかのように声をかけていた。
少し和やかな雰囲気になるベース。しかし、それは簡単に壊されてしまう。
「麻衣ちゃん来て!!」
悲鳴とともに麻衣の名前が叫ばれる。
一同は顔を見合せ、その声の元へと急いだ。