人形の家
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気が付けばベースにたどり着いていた二人。
名無しはナルの事を気難しい人という印象を抱いていたが、意外と会話が続いたことに驚いていた。
ナルに続いて、ベースに入ると麻衣たちの姿が見える。何やら話し込んでいる様子だ。
麻衣は名無しの姿を見るなり、声を上げる。
「あー!名無しさんっ!!」
ズカズカとこちらに迫ってくる麻衣に引き気味の名無し。滝川たちは興味津々そうにこちらを見つめていた。
「急に走り出すからビックリしましたよ!どこ行ってたんですか?」
「申し訳ない。それについてはこれから話す。麻衣ちゃんもこれからナルに報告するんだろう?」
申し訳なさそうに眉を下げる名無しは、ナルに目をやる。そんな名無しを見て、ナルは頷いた。
麻衣は先程礼美の部屋であった事を報告した。名無しも麻衣の報告に付け足すように、先程の出来事を伝える。
「この家なんなのよ!もしかしてあれ?近所でも有名なお化け屋敷ってやつ?」
二人の報告を聞いた、巫女である松崎綾子は気味が悪いと腕をさする。
「っつーよりミニーになんかあんじゃねぇのか?その見えない友達を連れてきたのはミニーだって言ったんだろ?」
滝川はそう言及するが、ナルは無言。名無しは滝川の言葉を否定した。
「ミニー自体はただの人形だ。霊に良いように使われているだけだ」
名無しの言葉に綾子は噛み付く。
「大体なんなのよアンタ。気付いたらここに入り浸っているし。霊視出来るっていうのも怪しいわよ!!」
突然の攻撃に名無しは困惑した。確かに馴れ馴れしかっただろうかと思う名無し。しかし、ナルが綾子の言葉をばさりと切り捨てた。
「松崎さんよりずっと信用できますが?」
「うぐっ……」
ナルの言葉に綾子が黙り込む。麻衣が名無しに大丈夫かと聞くが、名無しは大して気にしていない様子だった。
ナルはじっと滝川を見る。
「落としてみるか、ぼーさん?」
ナルの言葉に、待ってましたとばかりに胸を叩く滝川。
「おうともさ」
にやりと滝川が笑った。
__ナウマクサンマンダバザラダン
滝川が除霊している間、綾子は礼美についている。名無しを含めた四人は、ベースで滝川を見守っていた。
滝川が真言を唱える。名無しはそれを聞き、口角を上げた。坊主だと聞いた時は正直疑っていた。しかし、滝川はしっかり言葉が身に付いている。名無しは軽く微笑みながらそれを見つめていた。
「何だ?」
しばらくして、空気がざわめき始めたのを名無しは感じる。
「子供が騒いでいる……?」
先程まで静かだった子供の霊が騒ぎ始めた。
名無しの言葉にベース内にいる人たちは顔を顰める。その時、典子の悲鳴が響き渡った。名無しと麻衣は同時に部屋を飛び出し、典子の元へ急ぐ。
「典子さん!?どうしたの?」
廊下には床に倒れ込む典子がいた。典子の表情は苦痛で歪んでいる。
「どうした!?」
間もなく滝川もやって来た。滝川は倒れ込む典子を抱き起こし、足の方に目をやった。
「足首……脱臼しているぞ」
典子の足首には小さい手形がついている。どうやら足を勢いよく引っ張られたようだった。
「礼美ちゃん、何があったんだい?」
スピーカ越しに聞こえるナルの冷ややかな声。そして、画面に映る麻衣とナルと礼美。
名無しは、その光景をナルの助手であるリンと見守っていた。
「ミニーがやったのかな?」
ナルのこの声に礼美はハッとしたように顔を上げる。
「ミニーは僕が預かっている」
「返して!」
子供相手にも容赦ないナルの様子に、ため息をついたリン。名無しはその横でくすくすと笑っていた。
「いつもあんな感じなんですか?」
「……ええ」
少し呆れたような声色のリン。さらに名無しは可笑しそうに笑う。
一見怖そうに見えるリンもナルの相手には苦労しているのだろうか、名無しはしみじみ思った。
「……気になっていたのですが、貴方の周りにいるのは式神ですか?」
名無しのこの言葉に、リンは驚いた様子で名無しを見つめた。
「見えるのですか?」
リンの問いに名無しは頷いた。リンがさらに口を開こうとした時、名無しがあっと声を上げる。
「……ミニーが喋りだしたのはいつ?」
先程よりも幾分声色が優しくなったナルの言葉が、スピーカーから聞こえた。
その様子に名無しは優しく微笑む。
「……お家に来てから」
「最初はなんて?」
「お母さんは悪い魔女だって。お父さんは家来だって。二人で礼美を殺すよって……」
礼美がぽつりぽつりと喋り始める。
礼美によれば、ミニーは典子は魔女の味方だと言った。ミニーが礼美を守る代わりに誰とも仲良くなるなと。
礼美が約束を破れば、物を散らかしたり隠したりするらしい。
「それから、ミニーが他のお友達を連れてくるようになった?」
ナルの言葉に礼美が頷く。
「うんいっぱいいるの。礼美くらいの子。皆ミニーの家来なんだよ」
「ふむ、なるほど……」
礼美の言葉を聞き納得する名無し。そして、名無しはリンに声をかけた。
「この家の前の持ち主についての情報ってありますか?」
名無しの問いに頷くリン。
「拝見したいのですがよろしいですか?」
リンはファイルを取り出し、名無しに渡した。名無しはリンにお礼を言うと、静かにそれを読み始めた。