序章
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これはよく晴れた日のことだ。
谷山麻衣は運悪く助手という役目を仰せつかったわけだが……
「ナルいないの?」
渋谷サイキックリサーチの所長である、渋谷一也。彼は旧校舎の調査のためにやって来たという。
顔が良く頭も良い男だが、性格に難アリだ。「顔が良い」と褒めたところ「趣味は悪くない」と返ってきた時はびっくりこいた。物凄いナルシストぶりにびっくりこいた。
そんなことで、ナルシストのナルちゃんというあだ名をつけてやり、ナルちゃんの下、働きアリのように働いている。
「ナルー!!」
旧校舎内をくまなく探すが、機材は置いてあるものの、ナルちゃんの姿はどこにも見えない。
旧校舎にいないとなるとあとは車の中だろうか。昨日天井が落ちてきたこともあり、麻衣は慎重に旧校舎から出る。
外に出ると優しい風が麻衣の頬を撫でた。
その風に押されるように、桜の花びらが宙を舞う。その様子を見て思わず頬が緩む。やはり桜というものは素晴らしい。
そんなことを考えながら、車を停めてある場所へ足を進めようとした。
「あれ?」
進めようとした足は中途半端に止まる。
あれは一体誰だろうか。ぼーさん?綾子?ジョン?真砂子?……ナル?
いいや違う。
高級そうな車の横に佇む女性、だろうか。
女性にしては長身である。そして驚く程に真っ黒であった。髪も服も全身真っ黒である。おまけにサングラスをかけているため、すこぶる怪しい。
一瞬不審者かと思ったが、ナルと同じように旧校舎の調査のためにやって来たのかもしれない。
麻衣は恐る恐る彼女に近寄り、声をかけた。
「あのぅ……どちら様ですか」
麻衣の声に気付いた女性は、ゆっくりと顔をこちらに向けた。
「ひっ」
身長的に見下ろされるのは麻衣だ。思わず声が出てしまった。そんな麻衣の怖がる姿が面白かったのか、女性は可笑しそうに声を震わす。
「申し訳ない。怖がらすつもりはなかったのだが」
「あ、いえ、こちらこそごめんなさい」
もっと怖い感じの人かと思ったがそうでもないみたいだ。
「えっと、もしかして旧校舎の調査を?」
「いや、校長から依頼されて来たが、その依頼はまだ受理していない。ただの様子見ってところかな」
依頼されたが受理をしていない?様子見?一体どういう事だろうか。
「ゴーストハンターに坊主、巫女、エクソシスト、霊媒師……校長は余程この校舎を取り壊したいらしい」
「えっと……」
女性の口元が弧を描く。そして、麻衣の肩をぽんっと叩いた。
「大丈夫。きっと、いや、もうすぐ解決するよ」
「はぁっ!?それってどういう意味……」
麻衣は女性の言葉に驚き詰め寄るが、女性は笑いながら車に乗ってしまう。その女性は車の窓を開けながらこう言った。
「この調査に私は必要ないらしい」
「ま、待って!!」
「またね」
女性はひらひらと片手を振ると、車を発進させる。車に人間が適うはずもなく、車はあっという間に姿を消してしまった。
「……なんなの一体」
麻衣はその場に立ち尽くす。
あの女性は一体何者なのだろうか。そして彼女が言った「またね」という言葉。
麻衣は悶々と考えるが、答えは全く見えない。
「ふんっ」
パシンッ
頬を叩く音が木霊する。
「あの女性の事は一旦忘れよう!」
わからないものはわからない。考えたって無駄だ。
あたしのやるべきことはナルを見つける。そして、旧校舎の調査を進めることなのだ。と麻衣は意気込む。
麻衣は気合いを入れ直し、ナルがいるであろう車へと足を進める。
「またね」女性が残したこの言葉。
この言葉の意味を数ヶ月後知ることとなる。
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