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死にたい少女は星を見る

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ブーッブーッ
『別にって、いつも早いのに何もないわけないでしょ』
苛立っているのがメールの文面に、一気に現実に引き戻された。
でも僕は、彼女が何と言おうとあまり関わりたくはないのだ。この恋心は絶対にバレてはいけない。
僕が描きたいのは、僕の知らない彼女だから。
 
「出海」じゃなくて「出海さん」
「タメ口」じゃなくて「敬語」
「幼馴染」じゃなくて「クラスメイト」
 
そういう彼女が描きたい。
いつも楽しげで、歯を見せてニカッと笑う彼女ではなくて、
みんなの視線を一身で受け止めながらもどこか耽美な彼女。
僕が知らない顔の彼女を見てみたかった。
 
でもまだ描けない。僕は、「僕が知らない出海」のことを知らなすぎる。もっと。もっと見なければ、絵に描くことなんて到底出来ない。
 
だから朝は時間をずらして早く来ていた。僕の知らない出海は、どんな目でこの教室を見てるんだろう。僕の知らない出海は、誰の目にどういう風に映っているんだろう。
 
朝はいい。朝は全ての始まりで、全てが限りなく0に近い。僕の心も目も、0に近い。だから1番彼女の目に寄り添って世界を見れるような気がしていた。でも彼女が来てしまったら、そこは0ではなく1になってしまう。僕の心も、僕に戻ってしまう。
 
『朝早い方が電車空いてるからさ』
だから今日も嘘をつく。彼女を知るために、僕は彼女に嘘をつく。

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