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死にたい少女は星を見る

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「……あ」
コンビニの駐車場に腰をかける。縁石に座った彼女が声を上げた。
「ごめん、綺麗に半分になんなかった」
お金を持っていなかった僕は、結局彼女に奢ってもらった。ソーダ味の、パキンと縦に二つに折って食べる奴を。
「じゃあ僕こっち食べる」
「えー、何で、レディファーストとかいう奴?私がでっかい方でいいの?」
「いや、お前の金だろ」
元々奢るつもりだったからいいのにー、という彼女に、大きな方の半ペタを押し付ける。
「……前までお金無いとか言ってなかった?」
彼女といえば、小さな頃から万年金欠、最近は僕が奢ることの方が多かったような気がする。
「あー、ちょっと前からバイト始めたから」
「……うちの学校、バイト禁止だろ?」
僕の問いかけに、彼女はんー……と言葉を濁した。
「一応、許可は取ってるから多分平気……だと思う」
許可をもらえる制度なんてあっただろうか。そんな考え事をしていると、隣でシャクッと音がした。
「ん〜……自分で買っておいて言うことじゃないけど、やっぱブドウ味の方が好きだな」
彼女の手首を、溶けて崩れたアイスが伝う。それを口付けるようにして掬い、唇を舐める様は、中1とは思えないほど扇情的だった。
やっぱり彼女は、麦わら帽子と白いワンピース、それからソーダ味のアイスが世界一似合う。
恋を知ったのは、ある夏のとてもとても暑い日のことだった。

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