このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

死にたい少女は星を見る

「好き、だ」
「そう……それで?」
思えば、僕達の奇妙な関係はここから始まっていた。
 
**
 
僕の学校には高嶺の花がいる。
神の贈り物といっても過言ではないほどの整った顔立ち、風が吹けばさらりと流れる艶やかな黒髪。それに加え、頭まで良く、定期試験では学年一位を譲ったことがないというのだから驚きである。まあそれが彼女が高嶺の花たる所以だが。
 
彼女には、一人だけ幼馴染がいるらしい。高嶺の花に比べ、隣に並ぶにはあまりにも足らぬ容姿と、地味な雰囲気。頭だけは良いかもしれないが……。それが、高嶺の花である彼女と合わせて伝えられる話だった。
 
何を隠そう、その幼馴染で地味男というのがこの僕である。
正直そこまで言われると傷つかないわけではないけれど……自分が地味なのも、顔が平凡なのも自覚している。この丸眼鏡も、きっと地味さを醸し出す一つの要因であることも、分かっている。けれど、これだけは僕に欠かせないものだからしょうがない。それに目立ちたい訳でもないのだから良しとしよう。それに、ごくごく平凡な僕がさらにくすんで見えるくらい、彼女が美しく鮮やかなのも事実なのだ。
 
「あっ、出海さん!」
「おはよう!」
 
噂をすれば、だ。彼女……出海怜はいつもなら、始業チャイムの30分前に着く。それに合わせ、取り巻きのように周りに侍る女子も早く登校し、キャッキャと騒ぎ出すのだ。これでは作業にならないと、僕もそれに合わせて早く着くようにしたのだが……3日前から、彼女が45分前に登校するようになった。困ったものである。それに……
 
ブーッブーッ
 
ほら来た。彼女はここ最近、朝登校するとすぐに僕にメールを寄越す。しかも、なんだかいつも不機嫌なようなのだ。
 
『どうしていつも早いの』
 
それはこっちのセリフだ!という言葉を飲み込み、カカカカッと適当に返信を打っておいた。
 
 
それに、正直なところ、僕は彼女と関わりたくないもっともな理由があるのである。

僕の幼馴染は可愛い。可愛いというより、美しいと形容した方がいいのかもしれない。
まあ小さい時は顔立ちの美しさは愚か、右も左もわからないようなものだったからなんとも思わなかった。手を繋いで公園に遊びに行ったり、どちらかの家で遊ぶことだってあった。でもそれは、「小さい時」の話である。
成長するにつれ、段々と価値観や考え方も変わっていく。人との関わり方や距離感を取るのも上手くなる。それと共に、はっきりとした自我……幼少期のそれではなく、常識を踏まえた上の……だって芽生える。
それに、あれだけ整った人物が身近にいながら、目で追わずにいられる人なぞいるのだろうか。
 
何が言いたいかというと。
つまり……僕は彼女に恋をしてしまったのである。
1/9ページ
スキ