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残滓

 
君がいなくても廻る世界に、ある意味僕は絶望したのかもしれない。
所詮僕は僕で、君は君だってことは知っていたはずなのに。
 
ソーダの泡がすぐに溶けてしまうのは、サイダーの甘みが消えてしまうのは
あまりに美しすぎるからかもしれない。
 
ソーダの甘さのような
サイダーの泡のような
一瞬にして絶世の恋。
けれど、恋だなんて一重に括れる様な美しい物語でもなかった。
 
忘れたくない。
あるいは、忘れた方が幸せかもしれない。
結局僕は、あの夏を、君の瞳の色を背負ったまま生きていくほかないのだろう。
 
それでも軌跡を刻むように、サイダーを飲み干す。
最後の一滴まで、氷のかけらすら残さぬように。
喉仏がドクンと鳴った。
 
もしもう一度君に逢えるのならば……
そんな有り得ない世界を描きながら、君の髪の柔らかさを想う。
もう一度君に逢えたなら。
今度はアイスでも乗せて、ソーダの泡を、サイダーの甘みを閉じ込めてしまおうか。
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